たぶんちょっと性格の悪い猫を見た話

黑野羊
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今住んでいるアパートは細い小径沿いに建っている。

平日は毎朝家族を学校まで送っていくので、その道を通るのだが、送った帰りにそこを歩いていると、キジトラの猫が小径を先導しているのに気付いた。

彼はとことこ小径を駆けていくと、住んでいるアパートとその手前にあるマンションの間にある塀の上へひょひょいと上がる。そしてそのままアパートの外廊下のほうへ行ってしまった。

アパートの外廊下を時折うろついている猫を見たことがあったし、柄もよく似ているので、きっと彼がその猫なのだろう。

彼を追うつもりはないが、帰宅するためアパートの敷地へ入り、外廊下へ進む。

すると彼はとことこと慣れた様子で外廊下を進んでゆくと、アパートの奥隣にある戸建ての脇、アパートの外廊下のすぐ横から続いている塀の上へと登っていった。

ははあ、このアパートの外廊下は、彼の通り道であったか。だから時々見かけたようだ。

ところで、このアパートの奥隣にある戸建ては、犬を飼っている。よく吠える犬で、人の気配を察するだけでギャンギャンと吠えたてる。アパートの階段を自分が上っている時も、気付いたら吠えるような犬だ。

この日も階段を上がっているとギャンギャンと聞こえてきた。よく気付く犬だなぁ、とお隣のほうを見ると、塀の上にはさきほどの彼。

歩き去ったかと思ったが、なぜか立ち止まり、隣の戸建ての中をじっと見ているようだった。

犬たちはどうやら自分ではなく、猫である彼に吠えているらしい。吠えられたら逃げそうなものだが、彼は逃げるどころか立ち止まり、さらになぜか腰をおろして犬たちを眺めているようだった。

ずいぶんとまぁ、性格の悪い。

仕事があるので家の中に入ったが、犬たちの吠え声はその後もしばらく続いていた。

あれはきっと、彼の日課なのだろう。

@0151_hitsuji
ひつじです。