ヘテロスタシスについて

Ocm.|米田
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2020/2/11にYouTubeにて公開されたChroNoiRの楽曲『ヘテロスタシス』について

曲解して連想ゲームをするのが大好きな人間の解釈なので、歌詞の考察は一切ありません。そして現実とは一切関係ありません。そこだけよろしくお願いします。若干のif軸と個人的な印象の話です。曲を聴いたり歌詞を検索したりしながら読んでください。

ヘテロスタシスのファンアート

まずこの曲に対して、全体的に閉鎖感を感じます。

「あてもなく走り出したくなる」

「馬鹿騒ぎよ置いておかないで 知らない言葉で話さないで」

「このまま遠くへだなんて 思いもしないこと零して」

この辺りはどこにも行けない歯痒さとか、ひとりぼっちのようなさびしさがあると思います。特に叶さんは全体的に諦めてしまえば楽なのに諦めきれない、開き直りきれない印象です。対して葛葉さんはすでに諦めているというか、気にしているところが別にあると思っています。if軸で言う叶さんを縛りつけたことに責任を感じているけど、自分にできることは何か距離感も含めて模索しているような感じ。個人的には、叶さん(人間)が諦めるのを葛葉さん(吸血鬼)が待っているような曲だと感じています。

歌詞を最初から追っていきます。

「いつか何もなくなるまで裸足で踊っていよう」

はじめに来る歌詞にしては虚しすぎるのですが、この歌詞を長く生きる吸血鬼が歌っていると考えると"いつか"はかなり先でも現実的なんだと思います。しかしこれを問いかける相手は人間なので不確定なことになります。叶さんパートになると、それに対する不安や焦りが出てきます。

「今はただ笑うべき」

というのも自分に言い聞かせているようです。

サビ前は特に歯痒いです。葛葉さんパートで足りてない、なりきれない、わかっていたいと来て

「恥も外聞も関係性も嘘も全部 気にしないで さあ」

という歌詞が来ます。これらは第三者がいることによる客観性がもたらすもので、それを全部気にしないで"わかっていたい"となるとお互いだけで関係性を完結させることになります。人間がこれをやると依存関係に陥るのですが、長命種は感覚が違うのかな…と思います。対して叶さんから始まるサビは

「馬鹿騒ぎよ置いていかないで」

から始まります。これじゃあ全部気にしないでわかり合うのは無理ですよね。すれ違いというか感覚の違い、生命力の違いを対照的な歌詞から感じ取れます。(勝手に感じ取りました)それと、自分が知らない自分を相手が知っているのってすごく寂しいと思うので、この馬鹿騒ぎって第三者だけでなく叶さんの記憶にないふたりの思い出もあるんじゃないかな〜と思います。相手だけが持つものに対する羨ましさというか。葛葉さんパートは、何となく叶さんが言いたいことを察しているから、言えなくて藻掻いている気がしますよね。まだズケズケ物申せるほどの関係性ができていない、またはそんなことを言うのは自分ではないと踏みとどまっている。ふたりしかいないから座り込んで迷うことしかできないという歯痒さが良いです。

2番に入ります。

冒頭と同じく葛葉さんから始まります。このまま遠くへ行くなんて思ってもいないことで、1番の「いつか何もなくなるまで」もそこまで本気ではなかったのではないかと思います。ただ、疲れているので本音かもしれないですね。待つくらいならいっその事、みたいなのはあったかもしれないと考えると楽しいです。

「夢も偶像もセンテンスも纏う時間も 抱えきれずに」

この歌詞は1番サビでも話したように、自分だけが置いていかれる焦りや不安、さらに孤独感が読み取れます。センテンスとは文章の区切り、句点で区切られる一文のことですが、ここでは何度も生まれ変わる叶さんのことでしょうか。生まれ変わる度に出会う葛葉さんはひとりなのに、叶さんは今しか知らないのが寂しいですよね。もっと抽象的に捉えると、自分ではないと感じる自分を皆が見て惹かれているのに耐えきれない、と言ったところでしょうか。もっと本当の自分を知って、それでもまだ好きでいてくれるかという疑問を抱いている。

2番のサビは1番と順番が逆で、葛葉さん→叶さんになっています。

「ぎこちなく楽しい嘘を 僕に 僕に 見せて」

追いかけたら飛んでいきそうな人にこの言葉をかけるのって踏み込んでいますよね。全部気にしないで見せてってことだと思いますが、踏み込めなくてまだ言ってなさそう。それを受けて叶さんが

「そんなことで笑えないって 笑いながら言える時まで」

「言えないことが膨らんだまま まだ藻掻いてる途中」

と歌います。どこで区切るか迷うのですが、言えないことばかりの方が好きなのでそうします。この曲は最初から最後まで藻掻いているのですが、意味合いが変わってくるのがミソです。1番の"まだ藻掻いてる途中"は距離感を測りかねているような互いの違いによる気まずさを感じるけれど、2番では話したいけど話せない、タイミングを探しているような間に思えます。

「抵抗はなくなった」

「反発繰り返した」

「真ん中の隙間滑り込んだ」

さっきまで藻掻いていたふたりですが、ここで少し吹っ切れています。抵抗も反発もしつくした結果、受け入れるでもない選択肢を選んだのではないでしょうか。何事にも白か黒しかないわけではないので、散々藻掻いて「まだ藻掻いてる途中」という答えを出したんだと思います。グレーを選ぶのって勇気がいるけれど、ふたりなら大丈夫だと思います。

「足りないものなんて一つもない 僕は 僕は 僕は」

ここで初めて、葛葉さんからしてみたら足りないものはなく、いつでも完全な叶さんであるというのがわかりました。叶さんの心配や不安は葛葉さんにとってはどうでもよくて(と言うと雑ですが)叶さんが吹っ切れるまで待っていたんだと思います。

最後のサビです。1番と同じことを繰り返す叶さん。葛葉さんは

「何もかも笑えなくなって 全部全部嫌になったなら 世界征服でもしよう」

と歌います。ぎこちなく楽しい嘘です。個人的に本当にできるかわからない、叶えられるかは関係ない言葉ってすごくやさしいと思うのですが、それだけ信用してくれていると感じるからでしょうか。ずっと叶さんを葛葉さんが待っているように聞こえていたけれど、葛葉さんにも焦りや不安があったのかもしれないです。裸足で踊っていたひとが世界征服を持ちかけてくるのってすごい変化です。最終的にはまだ藻掻いてる途中でこの話は持ち越されるのですが、答えを先延ばしにする答えを出すのってめちゃくちゃ好きです。諦めるのも一旦やめてとりあえず継続する、というのはひとりでは苦しいですが、ふたりなので大丈夫だと思います。

ここからが曲解連想ゲームの本番なのですが、これが全部予定調和だとしたら興奮します。どれだけ悩んで考えて答えを出さないことにしても、それも含めて結末になるとしたらどれほど孤独でちっぽけな存在でしょうか。

私はイレギュラーなんてこの世になく、宇宙にとって些細な存在である生命が偶然に感じることすべてが運命であり、必然的であるという考えがとても好きです。世界は常に現状からたどりつける最低限の最適解の連続で、決められた結果が個々にあるのではなく、すべては宇宙が終わるまでの過程でしかないとしたら……

つまり、葛葉さんが歌っている「予定調和には足りていない」はまだ予定調和にとどいていなかっただけで、「観測者にはなりきれない」は観測者に適さない情を持ってしまったことになります。まだなかっただけ、自分の立場ではなかっただけでお互いが隣にいることが正解だったとしたら嬉しいです。そしてふたりの意思とは関係なくそれが決まっていたとしたらすごく良いです。

度々話しているのですが、ChroNoiRは仲が良いふたりで結成したというよりも、ある程度ビジネスの関係から始まっていてそこから仲良くなったと見ていて思っていました。それが6年も続いていてワンマンライブをやってファン(リスナー)に向かって「仲良いよ」と葛葉さんの方から言うようになったのが、私はとても驚いています。3周年くらいの時にはもうこの人たちってこうなる運命だったんだなと思うほど引き合わされていたように感じていたので……(気が早い)そういうところが鈍感そうというか、恥がありそうな葛葉さんから言うなんてめちゃくちゃ仲良いじゃないですか。

話は逸れましたが、とにかく知らねえ何かに引き合わされてふたりで継続を選んだのは運命というよりも予定調和で、自力で掴んだものではない息苦しさやもどかしさ、寂しさをヘテロスタシスに感じ、絵にしていました。一枚絵なのでバレないと思っていたことなのですが、毎回「このふたりは仲の良さで上手くやれているわけではなく、無理やり引き合わされて仲良くせざるを得ないほどピッタリな存在」と思いながら描いていました。Geminidsも合わせて考えると、ふたりは私たちが観測できる最後まで不変と継続を選択しています。死に一番近いのは不死だと私は考えていて、それはとても孤独です。でもふたりは選んでいて、たどり着くまで何度も"まだ藻掻いてる途中"を繰り返している。永遠に途中なんですよね。終着点ではあるけれどエンドロールの先はあって、しかし先は見ることができません。つまり現実世界では無いも同然です。このパラドックスやふたりの孤独、現実との齟齬と親和性を描きたくて、ずっとヘテロスタシスを題材にしていました。

でも現実のふたりがめちゃくちゃ仲良くなっていたので、ヘテロスタシスのFAを描く自信がなくなっていました。だって現実のふたりの方が仲良くて、普通に友達をやってるので……笑 今も活動している人たちを前に昔にばかりとらわれているのも嫌だったので、こうしてまとめました。

でもやっぱりヘテロスタシスが好き〜!というわけで、終わります。言いたいことは絵に描いているので、なんか色々感じ取ってもらえたら嬉しいです。ここまで読んでくれてありがとう。

@0cm
ひとりごと