晴れ間を縫う

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公開:2026/4/13

もう春が近い頃、嵐の晴れ間に遠くの方で雷鳴がした。手紙達がまるで意思があるかのように雷鳴がした方から遠ざかって飛んでいく。ああ、まだ嵐は終わっていないのか。今年の冬はとても長かった気がする。自分の息が白い。とても寒いのだ。


数ヶ月前、海の上に浮き出ている大きな魚骨群を縄張りにするさかなたちが私の目を盗んで冬の風を捕まえて力を得ようとしていた。冬の風は晴れ間に地を這うように移動する為、さかなたちは晴れ間を狙っていた。それを阻止する為に晴れ間を狙って西の岬に張り込んでいたことを思い出した。そしてさかなと戦い…。それから二週間ほど経って、嵐は晴れ間になり皆外に出れるようになった。冬支度を例年通りにして、火は森の祭壇に還す。めずらしく私もそこに同席した。(というより、無理矢理連れてこられた……。全てはあの気象調査隊の会長のせいだ。)儀式は圧巻だった。呪文を唱え終えると、火は悪い気を吸って黒くなり洞窟の中に消えていった。その儀式、誰かの祈り、営み……全て美しかった。三千年生きている。美しいものは山ほど見た。なのにまだ見たことのない美しいものが増えていく。何千回と繰り返す晴れ間を縫う時もいつも違う雲に出会う。全てにおいて、何一つ同じ色も形もないだろうと思った。


丁度雨がいきなり強く降ってきた。雷がうるさい。いつもこのとんがり帽子は雨を防いでいることをすっかり当たり前になっていたので、忘れていた。帽子を取ってみれば新しいものが見えるかもしれない。そう思って帽子を取って海岸を走る。午後3時ごろの温かい日差しが雲の間から垂れている。私は次の雲の間まで走る。走る。それをひたすらに追いかけて。走る。その時まるで私は子供に戻ったようだった。疲れ果てて私は海岸で眠ってしまったらしい。またあの会長の家で私は一日お世話になるのだった。

@2c0m1
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