I own you

2ho
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暫定的に、便宜上、『全部どうでもいい』と仮定してかろうじて日々に参加していたら、それはやっぱり無理筋だったようで、帰り道にイヤホンからBill EvansとJim Hallの『Skating In Central Park』が流れてきたとたん戦略はご破算になった。

https://m.youtube.com/watch?v=qGF7873UxTw

こういうふうに気楽なのんきな気分で後ろ手に組んでまたふらふら通りを散歩できる日が来るんだろうかと思ったらもうだめだった。NYに行ったこともないのに。

Scott LaFaroを亡くしたあの時期のEvansがどんなにJim Hallに救われたか伺えるような気がする。あの金色のんきなソロを弾けるなんて。ふたりが描く画が完全に同じものを指してて、つまりそれは詩ってことだ。というかJim Hallのギターって本当に"気が良い"。

小沢健二の『ローラースケートパーク』(ともしかしたら『天使たちのシーン』も)って、この演奏の連歌なのかもしれないなと初めて思った。

Evansの演奏でこういうことが起こったのは二度目で、最初のは10数年前クタクタで乗ったりんかい線のなかで聴いた『Autumn Leaves』だった。そうだった、そういえばこの世には乾いて舞うプラタナスの落葉とか、飲みかけのワイングラスとそれを透かす陽の光とか、パリの裏路地とか、コートの裾とか、女とか、男とか、まだ美しいものがあるんだった、と、ふと眠りから覚めるように静かに思った。ドキュメンタリの映画も観ていて、かなり難しい、快活な面もあるとはいえ幸せを求めて動くほどともにある人を傷つけてしまうようなたちの人だったようなのも知ってはいるが、作られた芸術上の空間は、独立して古びずいつまでも人を抱きとめる力があると教えてくれるしおそらく作者本人も、そこでしか本当には癒えない部分があるのかもしれない。