同人誌を描くことの良いところは同人誌を描く時間を持てることで、描いているその間はある空間で出てくるあの人たちと一緒にいられる。
ただし、当然さまざまなところへ皺寄せがいって、ロードレーサーが陸上の囚人と呼ばれるほどではないけれど、だいぶ生活の円グラフが圧縮されて一見シンプルになる。原稿しているとき(何段階かある)としていないとき、全体的に何より違うのは格段に減るインプットの量で、数ヶ月そんな日々を過ごした後訪れる"脱稿直後"(今)は突然釈放された元収容者みたいなおもむきがある。うっすらした瞑想状態から弾き出された反動でぽかんとしてるし、さっきまでいた人がいないような心もとなさを感じるし、離脱症状が出る。
まぶいを落とした人に、もしかしたら似ているのかもしれない。
そんな状態なので、娑婆に復帰して摂取するコンテンツは回復食みたいに慎重に、大事にしたほうがいいんだと思う。原稿前まで読んでいたものの続きをというわけにもいかない。取り組んでいた話との相性もある。
以前『めぐりながれるものの人類学(石井美保/青土社)』をチョイスできたのは本当に幸運だった。
今回はどうしようかなあと決めかねているうちに『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観に行ってしまい、今、妙な潮流のはざまにいる。