謎に満ちた世界感。徐々に見えてくる悲壮感。悲しく切ないこの物語が私を虜にしたのは言うまでもない。

ネタバレは避けるべきタイトルだ。だから相変わらず自分の話をする。
大学生くらいの頃。私は新しい技術に賛成だった。インターネットは目まぐるしく進化した。個人サイトを眺めて読んで楽しむ時代が終わりを告げた。掲示板全盛期となり、先進的な動画投稿サイトが現れた。インターネットテクノロジーだけではない。飲食店も画期的な食事を提供するようになった。食事のレベルは向上した。家具や住まいも良きデザインに恵まれた。その恩恵を受けながら私は独身時代を過ごした。当然、医療面での進歩も歓迎だった。
あたらしい世界が足早にやってくる。反比例のグラフを逆にしたように。どんどん進化していく。科学が発達し、効率もいい。古い病気に新しい治療が見つかるように、急速に普及していく。素晴らしい。でも同時に、無慈悲で、残酷な世界でもある。
全てが効率的になる。人殺しやいじめも効率的になる。
私はそれを見て独身時代を過ごしてきた。
そんな背景があるから、私はローテクに魅了された。人は外的要因で効率よく生きてはいけない。自分の体でできる範囲で、効率よく生きればいいのだ。何かを得れば、何かを失う。何かを得たければ、代わりの何かを差し出す。こんな当たり前なことに、人々は気づかなくなっている。
私たちは便利な生活と長寿と健康を得た。
代わりに何を失っただろう?今一度、見つめ直しているのもいいのではないだろうか。この本を読んで、そう思った。