髪を切った。めちゃくちゃ切った。美容室の床には黒いプードルが1匹生成されていた。
思えば、3年前に髪を伸ばし始めた。当時、女優ののんちゃんがミディアムヘアの髪の毛にパーマをかけていて、男の子にも女の子にも見える雰囲気がすごくかっこよく、ものすごく憧れてしまったのだ。
精神と容姿のバランスで自分の中の性別を有耶無耶にしようとしている事に数年前に気がついた。しばらくはボブ又は耳が見えるほどの短髪でボーイッシュな格好の時期が長かったのだけれども、のんちゃんの姿を見たその日から髪を短くして真ん中狙うのって安易すぎるのでは?髪長くして真ん中狙えたらガチなのでは?などという謎のお馴染み逆張り精神が登場し、この2年ほどは「髪の長いパーマの人」として過ごしていた。
パーマの自分は本当にプードルのようで、洋服も色々楽しめるし結構気に入っていた。同時に、果たして今の私の性別は有耶無耶になっているだろうか。毎日考えていた。どちらかになりたいわけではなくて、どちらでもないになりたいのだった。
いつの間にかのんちゃんの髪の毛は少し短くまっすぐになって、カネコアヤノも再びボブになって、ブラッシュアップライフに出てきた安藤サクラのショートヘアはめちゃくちゃ眩しく見えるようになった。私もあれがいい。いつだってかっこよくなりたい。
正月に京都の街を両親と散歩した。父親はよく観光地で母と私の写真を撮りたがり、写真を撮る側にいることが多い私は撮られることになれていなくていつも固い表情になる。送られてきた写真を見ると、修学旅行に来た中学生みたいな表情の高見沢俊彦が映り込んでいて、ロン毛パーマ時代の終焉を悟る。
東京に帰ってすぐ、11月にパーマをかけなおしたばかりというのに美容師に連絡をして、容赦なく頭を丸めた。
この1週間、すこぶる気持ちが良い。鏡に映り込む自分の姿が結構かっこいい。ナルキッソス・ウィークを過ごさせていただきました。今度は逆に髪が短くてボーイッシュになりがちな部分からはみ出すことができたら超ガチじゃんという気持ちになっている。今まさに、超ガチに近いバランスかもしれない。逆張りの逆張りをするな。
最近の私は、どうしたの?と聞かれた場合いかに返すかのシミュレーションにふけている。特にいつもいじってくるお客さんに関して万が一「失恋した?」などと聞いてきた場合そうなんです…とあ、これ聞かない方が良かったかも…的な空気を醸し出した瞬間速攻で嘘で〜すとバカウザ笑顔をかましたい。とにかく、今のうちに多方面に何かあった風に見られたい。そして駆逐しなければ。