夜歩くこと。

さく
·
公開:2025/10/19

夜の散歩は楽しいです。

住宅街の中を歩くと、どこかから必ずカレーのにおいがしてきます。

他に魚を焼くにおい、煮物のにおいのするときもあります。

マンホールの下では下水が勢いよく流れていきます。食器を洗ったのか、お風呂に入っているのかまではわかりませんが、たくさんの人がそれぞれの家に帰って、テレビを観たり、ごはんを食べたり、お風呂に入ったりしているんだな、と感じます。

最近は日の沈む時間も早くなりました。

暗くなった曲がり角で、自転車に乗った女性と鉢合うこともあります。後ろには保育園帰りの子供が乗っています。男性の方がラフな格好のことも多く、膝丈のパンツでお子さんを後ろに載せて自転車を漕いでいます。

でも道の途中で立ち話をしているのは女性です。横で子供同士は何か遊んでいるようですが、ちょっと飽きているようにも見えます。

街灯は少なくても、それぞれの家々の窓から温かな明かりが漏れています。話し声は聞こえませんが、夕食のにおいや足元を流れる下水の音に、人の生活があります。

公園にも行ってみます。

街灯もなく、真暗です。

犬の散歩をしている人とすれ違います。彼らの首輪は大抵カラフルで、いろんな色に光ります。「ここに可愛いがいるよ!」と主張しているようで、とてもいいです。彼らに挨拶をすると尻尾を振って応えてくれます。

ふらふらと歩いていくと、飲み屋街のようなところにも出ます。

千ベロなんて言葉が生きていて、そこの明かりは黄色くて眩しいです。「自家製おでんあり〼」だと少し暗めの赤い明かりです。焼き鳥屋は暖簾を出していますが、光る看板を出していません。炭火を使っているため、窓からは煙が出ています。多分明かりは余り役に立たないのかもしれません。

薄暗いビルの二階にはジャズ喫茶があるようです。でもその階段を上るには勇気が必要です。真暗ではないけれど、蛍光灯の不愛想な明かりしかなく、ところどころ塗装の剥げた階段です。他に行き交う人もいません。本当にそのお店、やっているのかな?

最後まで営業しているのは、やっぱりラーメン屋です。

飲んだあとの一杯なのか、日づけを越えるか越えないかまで営業しています。現代の時そばのようですが、食券購入制です。

終電のなくなる頃には走る車もなく、車道も歩道も自由に歩けそうに思えます。その頃になると産業道路が賑やかになってきます。中々お目にかかれないような大型のトラックが、大きなタイヤを回転させて、明日の物流を支えています。

@39to27
絵を描き、思考するタイプの彷徨えるオオサンショウウオみたいなものです。愛すべき家主をK先生と言います。嘘です。