比較的親しい間柄の人を「あの人」と呼んでいる状態が好きだ。
一般的に日本語の指示語は「こそあど」の4系列に分かれていて、指し示す対象との距離関係によって使い分けるのだが、「この」は話し手の近く、「その」は聞き手の近くに対象がある時に使われるのに対して、「あの」はどちらからも離れている時に使うことがおおい。
けものフレンズというアニメの解説コーナーでコツメカワウソを担当していた東武動物公園のくどうおねえさんが至って自然にカワウソに対して「あの人たち」と呼んだのが好きだった。
教育実習に行った時、指導教員が生徒を「あの人は〜」と呼んでいたのも好きだった。
接する頻度からいえばうっかり「この子たち」と呼んでしまってもおかしくないところを、前者はあくまで博物館法の定めるところの自然系博物館の資料「コツメカワウソ」として、後者は子供と大人の間で揺れ動く年代の1人の人間としての尊重とそれを研究・指導する立場特有の距離感がある。自他境界の重要性が叫ばれる今日にあっては、このように言葉一つに意識がにじむこともあるのだとしみじみ感じ入る
初めて入ったパン屋で「アールグレイシフォン」なるフワフワをみつけたので買ってみることにした。会計する段になってレジの横を見ると「不揃いクッキー」とだけ書かれた袋のクッキーがあり、吸引力に抗えずそれも買ってみた。
シフォンはもちふわ、クッキーはさくほろで、こういう出会いを求めてパン屋に入ってしまうんだなぁ〜と思ったのだった。
仕事の休憩中に近くの大学にテナントで入っているチェーン店を利用した。国立大出身として、私立大学は訪れるたびに設備の豊かさや資金力の差を感じて目を細めてしまう場所である。
その飲食店も多数の学生を収容する前提の広く明るい空間を構えていて、どこかにいるこの場所が青春の記憶に紐づいている人に思いを馳せながら分厚いサンドイッチを頬張った。