爪のこと、手のこと

シオリ
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3歳からピアノをやっていて、物心ついたときには爪はギリギリまで短くしなくては怒られるものだった。その上、爪を噛んだり、甘皮を剥いたり、爪の周りの皮膚を剥く癖があった。特にストレスがかかるとその癖はひどくなって、小さいときのわたしの指先は常にボロボロだった。何かの拍子に人に手を見られたときなどは本当に恥ずかしくて、ずっと手は下で握って隠していた。本当にコンプレックスだった。

18歳でピアノを辞めて爪を伸ばすようになったら、意外にも自分の爪の形が素敵に見えて好きになった。それでネイルとかもするようになったら、少し手に自信が出て、ストレスに思うことがあっても、きれいな手を保ちたいからと手を弄って発散することが少なくなった。そうして自分を傷つけることを止めて、手入れもしたら、どんどん手はきれいになっていって、わたしの好きなパーツになった。

大学時代はたいてい爪は長くしていた。それが一番手がきれいに見えると思っていたからだった。でも、爪が短い時期のほうが長い人生だったから、長いと不便だなあと思ったし、爪が割れてしまうこともあったので、そういうときは嫌だな、と思っていた。

最近になって、コンタクトをするようになったというのもあって、また爪は短めに揃えるようになった。やっぱりその方が便利だった。長い爪もやっぱり好きなんだけど、短くてももう自分の指先を大切に出来ないということはなくて、どちらであっても自分の好きな手だなと思う。太ったので、指もずんぐりして、昔みたいなスラッとしたシルエットではないんだけど、それでもやっぱり好きだ。今の手は、自分の好きな手でありながら、実用性も兼ね備えていて、すごく気に入っている。

スラッとしてるから好きだとか、爪がきれいだから好きだとか、最初はそういう風に思っていたけど、わたしにとって手は、どんな状態でも、根拠なく好きだなあと思える数少ないパーツなんだな、と思って、そう思えるパーツができたことが嬉しかった。

今でもストレスがかかると手の皮を剥く癖はある。前ほど、すべての指から血が出るまで弄ることは少なくなったので多少はましだが、今日は深追いしてしまったなあ〜と後悔する日はまだある。でも、それで自分の手を嫌いになったりはしないし、恥ずかしくも思わなくなった。メンタルの調子を測る目安になっていて、そうやって自分で傷つけてしまった日は、後から手も自分の気持もケアして労るようになった。

それがすごく大人になったなあと思うし、自分の手をこれからも好きでいるために、もっとできることがあったらしたいなと思う。

@510r1
のんびり、日常。BLとぬいぐるみ。晩ごはんのこととペットのことも。