iPhone15とiPad Airを購入した。イヤホンやカバーを全部新調する羽目になって、気がついたら身の回りのものがピンクだらけになっていた。ピンクはかわいくてお気に入りの色なのだが、高校ぐらいから「ピンク色って、もしかして歳不相応なのではないか」と考えるようになった。幼少期はピンクこそ正義みたいな風潮があって、キュアドリーム色のぴかぴかランドセルを背負った女の子が、クラスで注目の的になっていたはずなのに。とはいえ青色で全身を包まれた自分を想像してみたところで、なんだか着せ替え人形みたいでまったく似合っていなかったから、まあ暫くはピンクまみれでもいいか、なんて思ったりして。
そんなことを考えていたら、大阪に戻るタイミングを逃していた。そもそも14時ぐらいに広島を出るつもりだったのに、昼前に目を覚ました時点で計画は破綻していたんだろう。さほど気にせず、新しく買ったイヤホンで音楽を聴きながら新しく買ったiPad Airで絵を描いた。可愛い色味の有線イヤホンは心なしか音質が悪かったが、なんとなくレトロっぽい音質なんだと思い込むことにした。変なところで前向きだ、と友人に言われたことがあるが、多分こういう所なんだろうと思う。
絵を描いていたら突然(2番目の)兄に肩を叩かれて、ペン先がぶれた。普段寡黙な彼がどうしたんだろうと思って振り返ると、兄はチョコレートを持ってこちらをじっと見つめていた。さっぱり意図が掴めない。 「おいしいの?」と聞けば、「わからない」と返されてしまう。首を傾げていると箱をぐいぐいと押し付けられて、そこではたと気がついた。そういえば明日、バレンタインデーだったっけ。言葉足らずにも程があるだろうと思ったが20年も一緒にいれば慣れているので、「ありがとう」とお礼を言った。「うん」と小さく頷いた兄は、いつものように部屋に戻ってゲームを始めていた。静かで滅多に部屋から出てこない兄が、わたしにチョコレートを渡すためだけにリビングに来てくれたんだなと思うと、なんだか恥ずかしくなって箱を開けた。あまいいちごチョコとホワイトチョコが入っていて、おいしかった。