「かなかなは人間やのになぁ」
ふと、いつだったかのインタビュー後に、しぃしぃから言われた言葉が頭の中をよぎった。
8回裏、アウトはまだひとつ。あと何球投げれるか、正直もうわからない。いい加減に交代させられるかも、握力だってほとんどない。普段なら考えられない失投も増えてきて、限界なんてとっくに超えてるのは自分が一番よく分かってる。それでも、痛む肩をあげて、振りかぶる。
ツーアウト、あとひとり。あとストライクみっつ。
そしたら次の回できっと味方が点をとってくれる。まだ投げていたい、譲りたくない、ここが僕の居場所なんだ。9回裏だって、延長だって、投げ切ってみせる。
真っ正面から刺さるひまちゃんの強い視線が頼もしくて、バックの皆が張り上げる声が背中を押してくれる。監督は、動かない。
まだ投げられる、まだここに居られる。
「ありがとね、しぃしぃ」
僕がほんとうに機械だったなら、よかったのに。