同人誌の目次や奥付などの本編ではないページのことを、俗に事務ページというらしいです。今回はその事務ページ、とくに奥付やコメントカットのデザインをつくり込むのが楽しいという話について書きます。
いままでつくった奥付のデザイン
1. 自分主催のアンソロジー

「不穏」がテーマのアンソロジーだったことと、本編の登場人物が蛇に関する逸話を持つことから、頭がノドで断ち切られた蛇の絵を大きく配置しました。
真暗闇にぬるりと浮き上がる蛇の曲線と、カチッと区分けされた直線的な文章のレイアウトの対比がポイント。シンプルな構成ながら、不穏な雰囲気が醸し出せたのではと思い気に入っています。
2. 自分の個人誌

上述のアンソロジーをつくった過程をまとめた本なので、象徴的な蛇の絵をこちらでも使用。蛇の腹の模様をドアップにしてテクスチャとして敷きました。(そしてこの蛇模様を小口にも配置して「擬似小口染」にしました。この話はまた今度書きたいです)
この本はアンソロジー制作に関するいろんな情報をめちゃくちゃに詰めた本だったので、奥付もわやくちゃになるよう横書き/縦書き、和文/欧文、明朝体/ゴシック体、正体/斜体が入り乱れたフリースタイル配置にしました。
文字を縦横無尽にいろんなところに置いていくのはバランスを取るのが難しい…けどその分やりがいのあった思い出の一品。
3. フォロワーの御本(ブックデザインを担当)

登場人物の異名が「鬼武蔵」だったことに着目して、書名に含まれる「蒐」の字を大きく取り上げました。これをページの上下で繋がるように配置することで、本書に収録された物語のテーマである「ループ」を表現しています。
また、文字が古びた感じになる加工をすることで「ループを閉じる古い封印」のようなイメージも重ねました。
こんな風に物語を象徴する概念をデザインを落とし込むのって本当に楽しいです。それが推しCPの本だとなおのこと…。
4. フォロワーの御本(ブックデザインを担当)

とにかく真っ赤な奥付です。書名や物語のイメージに忠実に。
本文は基本的にモノクロ印刷ですが、巻末の数ページのみフルカラー印刷に変更し、さらに表2・表3も特色の赤でベタ塗りにしました。
紙変えで赤い紙にする選択肢もあったのですが、この時はインク変えで、本文と同じ紙に赤いベタ面+黒い文字を印刷しています。紙変えだと赤の色みをコントロールするのが難しそうだったのと、紙の色だけでなく質感も変わってしまう気がしたのがそうした理由です。おかげで本の「かたまり感」がいい感じに出せたと思います。
本というかたちで表現したいことを、どんな印刷加工で実装するか。ここを考え尽くすのが装丁のおもしろさだなと改めて感じた御本でした。
奥付をつくる流れ
複雑なアイコンや画像素材はIllustrator・Photoshop・クリスタなどでつくって、それらをInDesignに取り込んでからレイアウトをつくり込む、という流れでやっています。
奥付に載せる情報はひとまず「書名、発行日、発行人(作者)の名前と連絡先、印刷所の名称」が必要なようです(参考→ホープツーワン 同人誌の奥付とは?奥付の内容・書き方を印刷会社が解説! )。
その他追記したい情報(取扱いの注意事項など)は、自分の本の場合には手元にある同人誌や一般書を参考にして記載する内容を決めています。
お手伝いした本の場合は、奥付に記載したい情報を作者さんにまとめていただき、それを入れていきます。注意事項や感想の送り先を書くかどうかは人それぞれなので、お任せした方がお互いあんしん。
また最近では、使用した紙や書体の情報などもかんたんに記載するようにしています。あとから振り返る時にすごく便利なのでおすすめです。
いままでつくったコメントカットのデザイン
コメントカットというのはアンソロジーの巻末によくある、ご寄稿者の寄書きページのことです。
1. フォロワー主催のアンソロジー(ブックデザインを担当)

書名に「レポート」というワードが入っていることから、「理科の実験ノート」風のデザインに仕上げました。枠の中に方眼紙のテクスチャを敷いたり、日付や細かい情報の記入欄を設けたりするとグッとそれっぽくなっていい感じに🧪
CP観について深掘りするアンケートなども載っていて、デザインともども眺めて楽しいページにできあがったかなと思います。
2. フォロワー主催のアンソロジー(ブックデザインを担当)

登場人物が平成のヤンキーということで、なつかしの平成アイテム「プロフィール帳」風のデザインにしました。プロフ帳独特の枠のかたちや枠内右上のプリサイズのアイコン画像がかわいいポイント。
賑やかな画面でも情報は読み取りにくくならないよう、区切り方や余白の取り方を工夫しています。
3. フォロワー主催のアンソロジー(ブックデザインを担当)

イラストを大きく見せるシンプルデザインです。レイアウトが間延びしないよう注意しつつ、文字のサイズ感や配置を細かく調整してつくり込みました。
こういう簡潔なデザインは、賑やかしの多いデザインとはまた違った難しさがあります。シンプルかつカッコよいレイアウトが組めるよう、引き続き精進したいものです。
コメントカットをつくる流れ
奥付と同様に、画像素材はIllustratorなどで作成し、レイアウトはInDesignでやっています。
内容は本によって全然違いがちですが、例えば過去の事例では「アイコンやイラストの画像、ペンネーム、作品タイトル、掲載ページ数、アンケート」などを入れていました。
ペンネームや作品タイトル、掲載ページ数などは原稿を拝受した時点で判明する場合が多いので焦らなくても大丈夫なのですが、画像やアンケートはご寄稿者さまにお願いして原稿とは別に用意していただく必要があります。
なのでコメントカットまわりは、制作のスケジューリングがちょっと大変かもしれません。執筆依頼は早めにしたいけど、まだデザインの方向性が決まってな〜いという場合も全然あるので……。
上述の実験ノート風やプロフ帳風デザインの時は比較的早い段階でこうしたいという具体的なイメージがあったので、ラフデザインを先につくった上で、画像のサイズやアンケート内容を決めて執筆依頼をするという流れで進めていました。
逆に、レイアウトをかっちり決めずに制作を進める時もあります。その場合でも1ページに何人分の情報を入れるかだけは事前にイメージした上で、画像サイズやアンケートの文字数上限などを決めて依頼しておくと安心かなという気がします。
またコメントカットをつくり込む時には、必要な情報をちまちまコピペして細かく位置調整をして内容にミスがないか確認して何かあったらさらに調整して…という地道な作業がほぼ確実に発生します。
なので実は、こうした作業を見越して余裕を持ったスケジュールで進めていくぞという意識こそがいちばん大事なのかもしれません。
なんやかんや気を使わなきゃいけない場面は多いですが、そうした苦労の分、完成した時の達成感もひとしおなのがコメントカット制作のおもしろさかなと思います。
以上、事務ページのデザインって楽しいじゃんという話を書いてみました。
ご感想やあなたの事務ページへのこだわりがございましたら、下記より感想レターを送っていただけるとよろこびます🕊️