好きだから選べない

八角
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久しぶりにゆっくりとMisskey.designのSTLを眺めたからか、年末だな〜と感じる日だった。

今年1年の振り返りTL。様々なジャンルの創作者が集まるSNSなので、流れてくる作品達は十人十色という言葉がピッタリな様子で、それぞれの個性を弾けさせTLを彩っている。

では僕もやってみようかと、今年の四枚を選ぶためドライブを確認した。したのだが、これがなかなか難しい。数はある。ラフなものからその時々の全力を出した絵。リクエストをもらって描いた絵。そしてTLで巻き起こる何らかの祭りのネタ絵など、 カラーイラストなどは4月からの8ヶ月でこの数年の間に描いた枚数を超えた。その中から、四枚である。

今年の一枚を選ぶなら、初期アイコン擬人化キャラの歓迎光臨絵だろう。一番多くの人に見てもらえたし、Misskey.designというSNSでの出会いを象徴する一枚だ。今年の一枚であれば、あれ以上の物はない。

しかし四枚となると、また基準が変わってくる。純粋に自分が気に入った絵を選ばねば、となるのだ。依頼で書いた絵はもちろん気に入っているし、他にもファンアートもカラーイラストも頑張った。ラフに描いた絵にだってソレにしかない味わいがある。モノクロの挿絵も思い入れで言えば、引け劣らない。楽しかった記憶とリンクしたネタ絵も当然気に入っている。

と、ここまで悩んで気付く。

──あれ?僕は僕の絵を好きになったのか

何を言っているのかと思われるのかもしれないが、僕の今の絵柄は『BL二次創作の描きたい話を漫画で描く』ために伸ばした絵柄だった。史実ネタを元に耽美で情緒的な話を表現するには、美しく繊細な絵柄が必要だった。そういう推しカプが見たかったから、描いていた。だけど、純粋に好きな絵柄は別の系統だったりする。

早い話、僕は僕の絵が好きではなかった。

Misskey.designに来た頃、僕はメインの二次創作ジャンルから距離をおき、延々絵柄を模索していた。染み付いた癖はなかなか抜けず、好きな絵柄にもブレがある。人の描くどの絵柄も素敵に見えて、自分の目指すべき絵がわからなくなり、迷走し、スケッチブックの山がいたずらに積み上がった。

絵を描くことは楽しいのに、完成した絵を見ることが苦痛だった。投稿してもハートがいくつかつくだけで、その記号と数字の評価をどう判断したら良いのかわからなかった。Twitterで他人から『神絵師のたまご』というリストに入れられた時は、たしかに羽を広げて存在感を顕にする神絵師には及ばず、自分の殻すら破れない卵のような存在だと、妙に納得してしまった。

Misskey.designにアカウントを作って、使い方がわからず数日TL観察して、とりあえずしれっと落書きを投稿した。Twitterだったら見向きもされないであろうソレに、即座に『格好良い』等のリアクションが飛んできて、嬉しくて心が暖かくなって、感じた嬉しさそのままをノートしたら『歓迎光臨』と迎え入れてもらえた。

褒められるというのは、それだけで自己肯定感を上げるエネルギーになる。褒めて育てる親ではなかったから、自己肯定感を上げるには自分自身を納得させる功績を作るしかなかった。それは成績だったり、何かしらの賞だったり。子供の頃は何度か絵でも賞を取ったが、大人になってから参加したコンペではピックアップが関の山。二次創作で褒められても、それは純粋な自分の功績ではないと、素直に受け止められなかった。

Misskey.designではどの絵を上げても、リアクションがもらえる。何ならRN後に感想ノートをしたためてくれる天使までいるのだ。Twitterでは100RTで1一言感想というだいたいそんな割合だったが、Misskeyではリアクション自体が絵に対する感想という意志を持った反応だ。そこにあるのは僕の絵を見た相手の感情の発露だ。

僕はもらったリアクションを毎回一つ一つ噛みしめる。

──ああ、ちゃんと格好いいと感じてもらえた。こっちの人はこのポイントを楽しんでくれたのか。この人はこういう物が好きなのか。え?こういうのも可愛いに入るのか?……そうか、僕の絵は版権キャラじゃなくても案外好いてもらえるんだな。

そうやって積み重なった他者から肯定的な反応が、自己肯定感を支えてくれて、今僕は自分の絵を好きになれたらしい。もちろん、練習し描いたことによって技術は上がった。だが絵柄は大して変わっていない。むしろ迷走前に戻った気すらしている。それでも僕は僕の絵がちゃんと『素敵な物』だと思えるようになった。

まだまだ模索してる途中だ。今描いている正月絵、純粋に好きな絵柄で描いて見ようというコンセプトで描いているため、若干不安だ。色味の確認用に上げた切り取りWIPへの反応は悪くなかった。たぶん、気に入ってもらえると思う。誰がどのキャラを描くかより、目の前の絵を見て自分がどう感じたかで反応してくれる場所だから、普段と違うデフォルメよりの絵柄でも、きっと誰かには届くだろう。そんな安心感もちゃんとある。

何度目かの言葉だが、良い出会いがあった年は良い年だ。場所も物も、人も、心も、素敵な影響をいっぱい受けて、自分を好きになれた年だった。とても幸せなことだと思う。

明日も仕事があるため、年賀絵は間に合うか微妙な進捗なのだが、正月の三ヶ日中に上げられたら良しとしよう。頑張ろう。

仕事終わりに新しいソファーを受け取って帰宅後に設置して、年越しそばを食べつつ、TVでも見て、Misskey.designで新年を迎えるにことになるだろう。しずインは更新できるかな?なんだか明日書くような話を今日書いてしまったので、書く内容に困るかもしれない。まあいいか。頑張りたまえ、明日の八角。

さてさて。

今年の四枚、選べねぇなぁ。

@8kaku
八角です。兼業イラストレーターやってます。 普段はMisskey.Designに居ます misskey.design/@8kaku