3時間の独り言

八角
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僕はミスデザで声を公開したことがない。

別名義であれば、史実モチーフ二次創作漫画の解説にツイッターのスペースを一度利用したことがあるが、わりとすぐ消したため、残ってはいない。たぶん。

声を公開しない理由はいくつかあるが、自分の声を好いていないし、身バレも怖い。僕の周りにはオタクが多いのでリスキーだ。

それでも、作ってもらった歌を自分でも歌ってみて公開しようと録音したことがある。こちらは諸事情でお蔵入りしたが、聞かせたくないとかではない。それくらい軽い感じだ。

じゃあなぜ八角代理のlive2Dの口パク動画などに声を載せないかといえば、一番の理由は単純に自分の声を考慮したキャラデザではないからだ。

早い話、顔と声が合わない。

声をキャラデザの要素に含めるなら、今とは違う雰囲気になる気がする。多分、もう少し年齢を幼くすれば合致するかもしれない。音に色のイメージが付随するタイプなので、そこの違和感が余計気になる。

イケボに生まれたかったですな。

いや。そもそもイケボってなんなんだ?

渋いイケボ、ええ声イケボ、優しいイケボ、カッコいいイケボ、ショタイケボ、雰囲気イケボ等等…

いや、マジでイケボってなんだ?

僕の幼馴染の兄貴は割と有名な歌い手さんで、10年以上そちらの第一線で若い女の子にキャーキャー言われてる。僕はあの声を聞くとスキンヘッドの親父殿を思い出すのでどうにも理解できないが、数多のファンを持つイケボ歌い手なのだ。熱狂的なファンを有するイケボ配信者。

幼馴染みは高身長のイケメンなので、その兄貴もたしか高身長のイケメン類だったはず。

まずいな。なんか、気付いてはいけない世の理不尽にぶち当たりそうな流れになってきた。

まあ、とにかく。イケメンがだしていそうな声がイケメンボイス、略してイケボって奴なのだろう。

せっかく顔がいい代理義体なのだから、イケボで話してほしいよなぁという超個人的欲求により、無音声口パク動画となったわけだ。

鉄のフライパンに油引き忘れて薄切り肉を入れてしまった眼の前の光景に比べるとめちゃくちゃどうでもいい話ではあるが、まあ八角代理というキャラクターも僕の作品の一つなので多少面倒なこだわりが生まれてしまったわけである。

それで色々考えた結果、声帯を作ることにした。外見も作ったんだから、理想の声帯も作れば良いんじゃね?てな発想だ。

バ美肉という言葉を知った頃に、何だそれ面白いな〜と色々調べた中にあったボイチェンフリーソフトをダウンロードし、いざ試せばこれがなんとも面白い。

遅延は1秒以下とはいえ気になるが、それでも思った以上に自然な声に驚く。高くすればちゃんと可愛い女性の声になるし、低くすればネット上でよく聞くようなイケボの完成だ。

ぶっちゃければ、可愛い女性の声で話す楽しさに目覚めるところだった。危ない危ない……バ美肉の魅力を垣間見てしまった。

とはいえ、自分の声とかけ離れた高さの声は、キャラと自分の乖離感が強い。あくまでも八角代理なので、自分の声と認識できる程度に調整しようと、試すこと3時間。

3時間である。

声を慣らすのだから当然声を出している。最初は「あいうえお」などと発声していたが、だんだん楽しくなってきて思いついたことを話し出す。声や機能についての感想からはじまり、今日あったことや猫の可愛さ、過去の鬱憤とか仕事の愚痴などなど……

自分で描いて作った自分の表情をトラッキングするキャラクターを眺めながら、3時間も一人楽しく喋り続ける変人の完成である。

いやだって、めっちゃ気が楽なんだ。誰も聞いていないからこそ、話す内容に気をつける必要もないし、聞き手を楽しませる面白さとか相手の価値観とかオチとか考える必要もない。めっちゃ楽。脳死で自分がただ楽しく話せば良い。

僕を相手に2時間以上話し続けるおしゃべりな姉の気持ちを、完全に理解してしまった瞬間である。

「さすがに眠くなってきたな〜そろそろ寝るか〜今何時?は??2時!?え、じゃあ僕22時から一人で3時間も話してた!?マジか~いやでも寝たら仕事なんだよぉヤダよぉ休みくれよぉ…」

終始こんな調子である。というか22時から2時まで話していたなら4時間だわ。4時間の独り言じゃん。おい、タイトル詐欺だぞ。

水も飲まずにそんな長時間話していただけでも狂気の沙汰なのに、全て独り言だ。対談相手どころかリスナーもいなければコメントもない状態で雑談4時間続けられるの、一周回って才能じゃないか。嫌だよそんな一人楽しすぎる才能。もっとなんかあっただろ、神様。

つまり僕はここにダラダラ書き連ねるのと同じノリで、延々一人で話し続けられるのである。怖。

じゃあ配信者向いてるかって言えばそうじゃない。ズーズー弁環境港町育ちである。イントネーションも滑舌も怪しい音がある上に、話し言葉が荒い。あとめっちゃ噛む。誤字脱字と同じ頻度で噛む。

そもそも僕の使う古いノーパソは、液タブと2窓の状態でOBSとVtubeStudioを同時に動かした時点でカクつくので、そういう流行りの遊びはできない。

まあ、気が向いたら動画を上げてみようか。流行りは過ぎたが、リアクション読み上げをやるのもいいかもしれない。何なら早口言葉でもいいか。

なぜかまたひとり楽しい趣味が増えてしまったが、一事が万事そういう奴である。潔く大人の諦めの良さを発揮して楽しむことにしよう。暇人のストレス解消趣味としてはコスパが良い。

ここまで読んでくれた奇特な貴方も、ぜひ試してみて欲しい。僕のナカマがいることを願う。切に願う。というか、それくらいは普通だよって誰か言ってくれ。

ちなみに僕は、東京特許許可局を生まれてこの方噛まずに言い切れたことがないが、皆さんはいかがだろうか。

@8kaku
八角です。兼業イラストレーターやってます。 普段はMisskey.Designに居ます misskey.design/@8kaku