作る。造る。創る。

八角
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ディズニー音楽について特集した番組と、ジブリの宮崎駿監督を追ったドキュメンタリーをみた。

ディズニーのミュージカル作品は最近はあまり見ていないのだが、それでも100年間最前線最先端でアニメ分野を牽引してきた老舗の『作る』事に対する矜持を感じた。ディズニー作品一つ一つの世界を大切に、その世界に没頭させるための仕掛けが、映像、音楽、そして立体物に至るまで、最新技術と創意工夫でデザインされ、我々に届けられている。

その技術には学びが多く、BGMから流れるような自然な歌い出しや、世界観を繋ぐ環境音など、自分の創作にも活かせる物があった。

ディズニーランド行きたい。ディズニーシーも行きたい。音が多い場所は苦手で、BGMにゆっくり耳を傾けたことがなかったので、次に行くときはそれ込みで楽しみたいと思う。

次に、途中からではあるがNHKのプロフェッショナル〜仕事の流儀〜で宮崎駿監督を追ったドキュメンタリーを視聴した。いつだったかは忘れたが、同局で放送した宮崎駿監督のドキュメンタリーでも、彼の人の創作エネルギーに圧倒されたのだが、今回もすごかった。

高畑勲監督の死が宮崎監督にとても大きな影響を与えたのだろうということは、映画『君たちはどう生きるか』を視聴しなんとなく想像していたが、そんなものは所詮凡人の想像でしかなかった。日本を代表する創作者の魂の削り合いと慟哭が、今回のドキュメンタリーで見て取れた。

脳の蓋を開ける、そうすることでアニメの世界に飛び込む宮崎監督は、注連縄飾りで祀られるように、スタッフから境界を引かれていた。

垂れ下がった白い紙垂が、鬼才と凡人の境界線を示すようで、あれだけの作品を作るにはあの領域に踏み込まねばならないと、その覚悟を問われるような感覚に陥り、恐怖が湧き上がった。

今の僕には踏み込めない領域。飛び込み、潜れば、もがき苦しむことがわかりきった深みだ。

ああでも、羨ましい。あれに憧れない創作者はいるのだろうか。自分の命から湧き上がる創作意欲を全て注ぎ込みぶつけて、その世界に潜り対話する。そうして編み上げた物語を日本の最高峰のスタッフによって映像化するのだ。心がざわついてしまうのは当然だろう。

アレに憧れてジブリスタジオに入れば痛い目を見るのはわかりきったことだし、今更そんなレベルになれるとは思わないが、それでも。

諦めていた欲が、冒険心が、創作意欲が、ジワリジワリと熱を持つ。

自分はどこまで踏み込めるだろう。

自分はどこまで潜れるだろう。

この創作欲に命をかけたら、なにが作れるのだろう。意識して維持している正気を捨てて、咽まれるように狂気に身を預けて創作できたら、どんなに幸せだろう。

そんな、あまり僕らしくない熱が、うずいて仕方ない。

とは言え現実は甘くはないので、明日も僕は魚を捌かないといけないし、創作に使える時間は限られている。正気を手放さないようにアラームをかけ、部屋の温度は少し下げる。寒くなると集中は途切れやすいからだ。今日も夜中の1時には猫がもう寝ろとモフられにやって来るだろう。

少しずつ、少しずつ、正気を維持したまま片足だけ踏み込んで、潜って、帰って来る。そうして創作世界を広げて、僕だけが作れる物語を編んでいこう。

作り上げたものが命綱になって、いずれ潜れる深さも増えていくだろう。

そんな希望を持って、ペンを持とう。

@8kaku
八角です。兼業イラストレーターやってます。 普段はMisskey.Designに居ます misskey.design/@8kaku