大切なこと

母の認知症が進み、日々の生活に大きなストレスを感じるようになってから、意識するようになったことがある。昨日も似たようなことを書いたけど、自分が楽しいと感じることをしよう。やりたいことを我慢せず、やれる範囲でどんどんやってみよう。以前は生活の一部だった、音楽を聴くことやじっくり腰を据えてゲームをすることを再開したのもそのためだ。

近ごろ新たに見つけた楽しみが、買い物ついでにコメダ珈琲店でのんびりすることだ。だいたい母のデイサービスの日に合わせて、週に2回足を運ぶ。おかげでコーヒーチケットはどんどん減っていくが、新鮮さと解放感の両方を感じる。

というのも、わたしはそれまで、ああいった店に一人で入る機会がほとんどなかったからだ。

以前のわたしは母と外出するのが大半だった。家でも外出時も一緒。思えば息苦しいほどの距離感だったのに、母が今のようになるまで、わたしはそんなことを考えもせずに生きてきた。

母がデイサービスに通うようになり、束の間の自由を得ることに罪悪感を抱いた時期もある。でも、母と離れる時間を持つことは、母とわたしの関係を捉え直す意味でも大切なことだ。母がどこまでデイサービスを楽しんでいるかはわからないが、少なくともわたしは母と一緒に外出していたころは注文しなかったメニューを注文したり、帰りにちょっと遠回りをして景色に見とれたり、100円ショップをぶらぶらしたり、カラスを眺めたり……そんな、他愛のない行為の中に楽しさを見つけられるようになった。

母もいずれ施設に入ることになるだろう。そのときは、わたしももっといろいろなことに挑戦してみたい。ハンドメイド的な趣味を持ちたいし、小さな植物も育ててみたい。落語も聴いてみたいし、時代劇専門チャンネルも視聴したい。一度は両国国技館で序ノ口から結びまで大相撲観戦がしたい。カメも飼いたい。すべて、母と暮らしているかぎりは実現できないことばかりだ。

認知症になった家族との付き合いは、ときに苦しい。これまで心の拠り所にしてきたものががらがらと崩れ落ちて、死んでしまいたくなるときもある。だからこそ、自分の生活の中に少しずつ母の不在の時間を作ること、未来にやりたいことを積み重ねていくことは、母だけでなくわたしが生きていくためにも大切なことだと思っている。

@9ris10f
自分のこと、日常のこと、家族の介護のことなどを書きます。