わたしは自覚した。いつまでもあの頃に囚われている。
このサービスを始めた理由、それは今日見た夢を書き留めておくためだ。
今年最後に見た夢は、おじいちゃんの家にいる夢だった。何度見たかもわからない夢だった。なっちゃんたちがいて、おばさまやまりねぇもいて─おじいちゃんもこゆりもいた。欠けることなく、あの頃と同じ全員がいた。
いつも見ていた夢と違ったのは、わたしが動画をまわしていたこと。
今までは夢というより思い出していたんだろう。なっちゃんと朝ごはんを食べていたり、畑で遊んでいたり、晩御飯前の夕暮れ時に2階で遊んでいたり。
「もう次いつ来れるかわからないから動画撮っとこう!」
夢の中でわたしが言っていた。全ての部屋、廊下、階段、2階まで余すことなくスマホで動画を撮っていた。そして次の瞬間、目が覚めた。目に入ったのは、今はもう見ることができないおじいちゃんちの天井だった。
夢の中で目が覚めるとはなんとも奇妙な出来事だった。
その天井を見て、横を見る。こゆりが寝ていた。ここ数年感じていなかった安心感に包まれた。「私はここに帰ってきたんだ」と思った。なんでそんなことを思ったんだろう。安心感に包まれた後からは記憶がない。
次に目を覚ました時は、夢から覚めていた。
嫌というほど見慣れた天井。現実に帰ってきたのだ。
もう絶対に戻れるはずのない時間。おじいちゃんもこゆりももういない。あの家にも帰れない。あの家はもう私たちの帰る場所ではない。
私は環境が新しくなることがとても苦手だ。例えば新生活だったり、学生時代ならクラス替えや席替えや転校生。受け入れるまでにとても時間がかかる。変わらないでずっとそのままでいたい。そんなことなんて、無理に決まってるのにね。
それでも、私は戻らないあの日たちを抱きしめて生きていくしかないんだろう。