2024年映画鑑賞録 19『エターナル・サンシャイン』&鑑賞録20『最強のふたり』

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今後、結構なスピードで映画を観ていく予定なので、できる限り簡単に感想録を記したパターンを書いておくことにした。これは未来の自分への赦しでもある。

エターナル・サンシャイン

監督: ミシェル・ゴンドリー

Amazonプライムで吹き替え版を視聴。107分。

あらすじ:バレンタインデーを控えたある日、男は奇妙な連絡を受ける。それは、ケンカ別れした恋人が、自分に関する記憶をすべて消したというものだった。復縁を望んでいた彼は落ち込むも、やがて自身もその施術を受けることを決める。

見ているあいだじゅうずっと、あ~愛って本当最悪で面倒くさくて怠くて大変で邪悪でどうしようもなくてそれに囚われてしまいがちな人間の愚かさといったら……と思っていたし、でも人を愛せることはある種の才能であって運の良さであってある意味唯一無二であって、何よりも大事にしたくなるしそういう衝動に駆られやすい感情なんだよな……とも思った。喧嘩した勢いでお互いの記憶を消すカップルも、記憶を消す作業中に担当している患者の女に恋して下着を奪う最低男も、不倫していた記憶を消された女と付き合っていた男も、医者も、その医者の妻も、もう全員が全員悉く愛ってやつに振り回されていて、歌って踊って笑って泣いて喧嘩して、拗れてそのままだったり、運よく絡め付いたものがほどけてぐちゃぐちゃになった場所には跡があるけどなんとか元通りになったりしていて、大変だった。でも、人を愛するということはそういう疲れや障害を乗り越えていかなくてはいけないのかもしれないし、つまずく小石の数が増えてくると苛々して、立ちはだかるものを想定しながら付き合っていくのはなんだかむずかしくて、都度声を荒げてしまうものなのだろう。ジョエルを見ているとそう思わされずにはいられなかった。彼女との記憶を消されたくなくて必死に記憶の中を逃げ惑うのに、いさ目が覚めたら彼女とまた喧嘩をする。必死に夢の中を練り歩いた記憶も、何十回だってささやいた「愛してる」も忘れて喧嘩をして、また別れそうになって、どうにかつなぎとめる。そういう、人を愛することで生まれる縺れのようなものを延々と眺めているようなかんじの映画だった。会話の一つ一つが軽快で、髪のオレンジがあざやかで、画面もさまざまな思い出にあふれていて観て楽しい。わたしだったら、嫌な人間との記憶を消すことのできる技術があったとして、何を消すだろうな、と思う。今のところは思いつかない。でも、そうしたくなる相手が現れたら、多分消す。消す手段をとる側の人間だろうな、とジョエルを見て確信する。

最強のふたり

監督 エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ

Amazonプライムで吹き替え版を視聴。112分。

あらすじ:パラグライダーの事故で首から下が麻痺した大富豪のフィリップ。介護人募集の面接にやってきたのは、スラム街暮らしの黒人青年ドリスだった。水と油の2人だったが、ドリスはフィリップの心を解きほぐし、固い絆で結ばれていく。

名作とは聞いていたもののなんだかんだで観れていない映画だった。やっと観た。観ることができてよかった。序盤のSeptemberでテンションが上がりまくり(吹奏楽部時代、演奏したことがあるのだ)、名曲をオープニングで流してくれる映画なんだから名作は名作足り得るのだ……などと聞き入っていた。September大好き!

序盤から繰り広げられるドリスのブラックジョークっぷりは今の時代に耳にすると怖くなるものばかりだが、フィリップがこういう、ドリスの歯に衣着せぬ物言いを好いている訳もなんとなくわかってしまうので憎めない。というかドリスは基本的に憎めない。ちょっと!? と感じる部分は都度ありながらも、なんというか、彼には独特のかわいげがあって観ている側にも愛される才能を知らしめてくる。遠慮のなさはいい方にも悪い方にも作用し、ドリスのまっすぐさはフィリップの心臓をあたたかくつらぬくのである。育ってきた環境や経験がことなるからこそ生まれる価値観の違い、芸術を見定める物差しの差異にさえフィリップが目を細めてわらいたくなる気持ちも、映画を観ていると自然に理解させられた。介護の経験がないからこそドリスはフィリップに当たり前の友人として接しながら彼に似合う服について一緒に悩むし、フィリップの誕生日パーティーにはクラシックじゃなくダンスの盛り上がる曲をかけてみんなで踊ろうとするし、娘を怒る音声を聴きながら電話越しにヤジを飛ばし、彼の手が動かせないからって好きな形にひげを剃る。幻想痛に苦しむ夜には声をかけ、ひたいの汗をぬぐい、外にも連れ出す。介護でなく、友人として寄り添う。『最強のふたり』なるほどな……とにやついてしまう。

実話をもとにしているとはいえ、現在の二人について最後に注釈が入るところでは笑ってしまった。ふたりとも幸せそうで何よりだが、こんな、200%ハッピーエンド!!!みたいなことあるのかよ、と思った。なによりだ。人が幸せであるよりいいことなんてあんまりない。この映画が200%ハッピーエンドがあふれる世界でよかった。

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自我の置き場(1週間日記・本と映画感想記録)