登山日記:京都に来てまで鞍馬貴船トレイル

achamoth
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公開:2024/6/9

前日、楽しいパーティーがあった。大いに飲み、食べ、笑い、ここだけの話を語り合った。

んで、その翌日せっかくなので鞍馬山を登ることにした。どういことやねん。

とはいってもピークハントではなく、景勝地を巡りながら鞍馬寺と貴船神社との間を歩こう、というトレイルコース。鞍馬山を歩くとはいえ、観光地化されている神社仏閣、調べても『登山をしてみたい初心者におすすめ、気軽に登山気分を味わえます』ってなもんで、わたしも気軽に友達を誘い訪れたわけだった。

出町柳から風情ある比叡電鉄に乗って鞍馬口へ。始点から終点への比叡電車ライド。降りると鞍馬天狗の仮面と南部鉄器の風鈴が登山者を迎えている。晴れた6月の京都はすでに暑かったが、鞍馬口まで来るとクーラーみたいな涼しい風が山より吹いていた。

これなら余裕で歩けると、観光気分で出発すると神社仏閣らしい階段が現れた。さぁ登りのスタートだ、よく晴れた日に登る神社仏閣の階段は気持ちが良いもの。ケーブルカーを尻目に徒歩ルートを選び、鞍馬山をゆっくり登っていく。

整えられた階段から、ゆっくりと玉砂利の傾斜となり、九十九折りの登り坂へ。

また石の階段が現れる頃には、すっかり疲れ果てていた。

いや……なかなか……ハードだな……

まだ参道である。カジュアルファッションでも登っていける場所、トレイルルートにも入っていない。ぺたんこ靴の女の子が彼氏と一緒に悠々登り、エモい灯篭の横でポーズを撮って映え撮影。そんな光景が至る所にある。涼しげで可愛い顔の彼女たちと比べてわたしはすでに息が上がっていた。

体力がない。運動不足。だからこそ解消のための登山趣味を始めたところであるが……ここまで差があるとは……!!

参道を歩き切り、鞍馬寺にたどり着いた頃にはヘトヘトである。ちょうど団体が供養をお願いしたのか読経していたのだが、それが十人以上の僧侶からなる大読経で、15分ほど本堂に滞在していたがその間終わることはなかった。

本堂の中は暗く、厳かで当時の装飾のまま本尊が祀られている。風はなお涼しく、参道を登ってかいた汗を気持ちよく冷やした。

さぁていよいよトレイルコースを渡っていこう。鞍馬寺から登山道を抜けて貴船神社への鞍馬山越えである。

登山道を1時間歩く。パンフレットには登山靴でないと入れません、なんて書いてあるが現地に来ると『貴船神社はこちら』ってなもんで、なんだか通常の参拝ルートのように看板が出ている。その為か、登山的な格好をしていないカジュアルファッションの観光客が、トレイルコースをバシバシに歩いていた。

ぺたんこ靴をはいた若い女子などマシな方で、サンダルの白人、3歳ぐらいの子を抱えた中国人男性など、そのまま行って大丈夫か?と心配になる人もちらほら。

なにせ登山しに来たのだと、登山靴にバックパック、登山特化の下着まで身につけているわたしがもう、辛いのだ。

木の根が浮き出た道、アップダウンの激しい道、整備された階段もあれば傷んだ木々の階段もあった。そしてそんな山道を行くと、ところどころに源義経ゆかりのものがある。彼が飲んだ水だの、背をくらべた石だの、牛若丸だった幼少期に遊んだ自然があるのだ。

こんなところで遊んでいては、そりゃあ百戦錬磨の豪傑にもなろう。体力が平地育ちの我々とは違うのだ。

背比べの石を超えると降るばかりになって、なかなかの勾配きいた道をふくらはぎHPを削りながら降りていくとやがて水の音がする。水にゆかりのある神社、貴船神社はもう近い。

小さな橋を渡るとそこは小洒落た参道であった。

ついさっきまで土煙る自然剥き出しの山中であったのに、急にオシャレ空間に放り出されてギャップに驚く。ここはまさに、ぺたんこ靴の女の子が似合う場所じゃあないか。変わらないのは貴船川の流れる音だけだった。

貴船神社の有名な赤い灯籠が並ぶ石畳の階段が登山で疲れた脚にとどめを刺す。もはや映え写真とか言ってられない。問答無用で友達の背中を勝手に撮るぜ。黒い背中と赤い灯籠が良いじゃないか。

貴船神社で有名なのは水占みくじでわたしも挑戦。普通に小吉。

登山に疲れた身体に水の神社は心地がいい。しばらく境内の東屋で休む。以前友人らがここに来た時は、霧雨が降って誰も居ない平日でまさに水が身近に感じられたという。

碁盤の目状に区切られた、盆地の京都を囲む山々の一部に触れた日であった。