おそらく、鬱病である。
だけど絶対に認めようとしない。無理やり病院へ連れて行ったけど、案の定プライドが邪魔をし本音を隠して睡眠導入剤だけをもらってきた。去年の秋からごはんを食べようとせず、5kg痩せた。『痩せてゆく自分が好きなんだ』と言ってこれまで見向きもしなかった体重計に頻繁に乗って一喜一憂している。
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話を聞いて欲しいというから平日は深夜2時まで待った。「今日はどんな日だった?」と昔のように尋ねても『疲れた』『後輩が大変で』『飲み会だったけど全然食べれないし呑めなくて』という、本人はきっと気付いていないネガティブな言葉ばかり出てくる。
最初は「大変だね、頑張ってるね。」と聞けたけど、半年も経つと私もしんどくなってきて、間接的に酷い言葉を言い放った。
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本人は気付いていない。だから酷い言葉を放つ私の理由を解ろうとしない。仕方ない。
『どうしてあんなに酷い言葉を言ったの?』と泣きながら言われた。本人を責めることになってしまうから「ごめんね、傷つけてごめんね。私も疲れてたんだと思う。」とわたしは自分のせいにしかできなかった。
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この数週間で症状が悪化した。
わたしはずっと心配してる。自分に何かできることはないかずっと探してる。元気になって欲しいとずっと思ってる。だけどそれが相手に伝わらなければ意義がない。私の存在に意味はない。
自分の無力さに打ちひしがれて、私自身も限界に達して、会社をズル休みした。電車に乗って、新橋の立ち飲み屋に行った。平日の昼間からひとりでアホみたいに飲んだ。
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酔いと同時に涙があふれて、どうしようもなくなって母に電話をした。『うん、うん』と閑かに聞いてくれて、端々に入る『そんなことないよ』の言葉で涙がもっとあふれた。一通り話し終えて「長々ごめんね、聞いてくれてありがとう」と伝えた。
『本当にがんばってるね。お母さんはあなたが本当にすごいと思ってる。できるだけ一緒にいてあげなさい。相手は今自分にいっぱいいっぱいで気付けてない。だけどあなたがいること自体が救いなの。たとえ離れることになっても、いい離れ方をしなさい。』そう言われて、さっきとはまた違うあたたかい涙があふれた。
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電話を切って大きく息を吸って、チャットモンチーの親知らずを流した。
" たまに帰ればご馳走 もう子供じゃないのにね ああだけどやっぱりあなたの子でよかった "
味方でいるよ。いれる限り。わたしは父と母の子だもの。だいすきで、大切なひとだもの。