2024年はカントの『純粋理性批判』を読みたいと思っている。しかし、なんの予備知識もなくたちうちできるような書物じゃないことは聞き知っているので、準備として入門書を読んだ。
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世間に溢れているカント入門書のなかで、私にとって最も参考になったのは、石川 文康(著)『カント入門(ちくま新書)』だ。哲学書を読み慣れていない私のような人間でも、最後まで興味を保って読めたのが良かった。純理の記述に沿って解説があるのではなく、純理(およびその後の批判書群)に至るカントの思考を追う順番で解説が進むので、わかりやすかったのだと思う。難解な言葉遣いが少なく読みやすい(入門書だから当たり前だと思われるかもしれないが、他のカント入門書と比べても、この本が一番配慮が行き届いていると思った)。全体を通して「仮象批判」という軸が貫かれているのも良かった。
御子柴 善之 (著)『カント哲学の核心 『プロレゴーメナ』から読み解く (NHKブックス)』も同じくらい参考になった。今後純理を読んでみてサッパリわからないという事態になったら、おそらくこの本を頼りにすると思う。
S.フリートレンダー (著), 長倉 誠一 (訳)『子どものためのカント』は一問一答式のディアレクティークという形式をとっていて、とっつきやすい。一問ずつじっくり向き合っていくのは楽しい。「子どものための」と銘打たれているけど、内容が平易とは言い難いので、これ一冊でカントに挑むのは難しいと思う。
入門書ばかり読んでわかった気になっていないで、ちゃんとカントを読めよ! と心の中で自分にツッコミ続けて、後ろめたいような嫌な気持ちになっていたが、いよいよ『純粋理性批判』を読み始める。クリスマスに、光文社古典新訳文庫版全7巻を購入した。この「やっと」という感慨において、前述の後ろ暗い気持ちより、やっぱり入門書を複数読んで良かったと感じるポジティブな感情がやや勝っていることに気がつく。それは、入門書の著者それぞれが、カントの哲学を捉える角度が微妙に異なっているのを実感したことで、たどり着くべき正解など無いと知ることができたからだと思う。好きなように読んでいいわけではないが(と言うより、自由に解釈できるほど高度な読み方が自分にできるとは思えない)、せっかく読むのだから楽しく読みたい。
ちなみに、入門書を読んで最も興味が湧いたのは「われわれにでき、また為すべき唯一のことは、幸福になることではなく、ただ道徳性(徳)の研鑽によって幸福に値する人間になることである」(前掲『カント入門』p.175より引用)という一文で、これはどうやら『実践理性批判』の内容であるらしい。まだまだ先になるだろうけど、読みたい。
カントの三批判書に挑戦するにあたって、これも読んでおくと良いよという文献をご存知の方は、ぜひ教えてください。