「魔法はイメージの世界」なら「夢もイメージの世界」

既に周知の事実だが、アニメ『葬送のフリーレン』、面白い。アニメ表現としてのフリーレンの演出論についても色々話したいこともあるのだが、それは後日にとっておく。

現時点での最新話「#21 魔法の世界」では水や大地など、"周囲のオブジェクトに対して物理操作を行う魔法" の設定についての言及があった。フリーレンたち魔法使い曰く「魔法はイメージの世界」であり、イメージできないことは魔法として行使できないのだという。劇中では池の水を魔法で操作して浮かび上がらせたり相手にぶつけたりはできても、人体の中に含まれている水を操作することはイメージできないので「人体に含まれる水をなんかしちゃう攻撃魔法」というのは使うことができない、と説明されていた。

水を物理操作する魔法を使う魔法使い、カンネとラヴィ―ネ

ならフリーレンやフェルンが使う、光線がビュンビュン飛ぶ魔法はどうなんだよ、それはイメージできるんかいな?と思うが、元となった殺人光線魔法「ゾルトラーク」を観察して "イメージできるようになった" と理屈をつけることもできるかもしれない。何にせよ今後の展開のギミックになりそうな、面白い設定だと思う。

アニメ21話を見た数日後、私は夢を見た。

夢の内容は『フリーレン』とは何の関係もないし、細かいシチュエーションをまったく覚えていない。が、とにかくスタジオのような場所でテレビ番組を撮影している状況で、スタジオに設置されたモニターに私が映っていた。

さらに正確に説明すると、モニターには私の後頭部が映っていた。

私の後頭部はハゲていた。

モニターに映る後頭部はかなり毛が薄くなっており、誰がどう見ても明らかにハゲている。確かに加齢に伴い毛量は減りつつあるかもしれないが、そこまで毛は少なくなっていないはず…。慌てた私は手で後頭部を触った。しかし指先が直接地肌に触れている感触もない。触覚で感じる毛量が、目で見る毛量と一致しない。おかしい。

そこで不意に目が覚めた。夢の中における視覚と触覚の不一致はどこから来たのか。髪の毛が薄くなっている人や写真を見たことがあるから「薄毛の見た目はイメージができる」。しかし幸いなことに自分が薄毛になったことがないし、さすがに薄毛になった人様の頭を触った経験もない。つまり人生において薄毛状態の頭を触った経験がないから「薄毛の触覚はイメージができない」のではないか。

夢の世界とは、人間が "イメージできる範囲限定で"「魔法が使える世界」なのだろう。

@akirafukuoka
福岡陽(akirafukuka) NTTコミュニケーションズ デザインスタジオ KOEL 所属 ntt.com/lp/koel ブランドストラテジストとして「善いブランドを創る」ためブランド/ストーリーテリング/デザインを扱う仕事をしています。