『未解決事件は終わらせないといけないから』。以前おすすめされていて早くやらねばと思っていた、9/19にSwitch版が発売されたため早速プレイ。
大傑作でした。とある少女の行方不明事件の真相を回想する形で解き明かす、という内容のゲームだが、ストーリーの緻密さ、ゲームを通じてテーマを伝える技術、どれも素晴らしい作品。3時間程度でクリアできて、価格はSwitch版は990円、Steam版は800円。詳細を説明すればするほど体験が損なわれてしまう気がするので、これを読んでいるあなた、今すぐ買って!
続いてこの作品のネタバレを避けつつ、私がこの作品から感じたことを少しだけ。
SNSという "混乱"
『未解決事件は終わらせないといけないから』のテーマに関しては作者のSomiさんが描かれている制作秘話に記されている。
権力者はいるが統治者はいない混乱の中で生き残ろうともがく人々に、繰り返される差別と不正の中でも耐え、お互いに連帯しようと努力する人々に少しは慰めになるようなゲームを作りたかった。
"混乱" と "慰め" は本作の重要なテーマであろう。ゲーム前半では特に "混乱" が顕著に描かれている。
本作のゲームプレイの大部分は「ある警察関係者が聞き取った、行方不明事件に関する様々な人物の供述」が、SNS的なタイムライン形式表示され、これを読むことで進んでいく。

プレイヤーは各人物の供述を読み進めながら事件の背景を探っていくことになるが、このゲームの面白さの一つに「この人物が発言したものとは限らない」点がある。
例えば行方不明になった少女の母親のタイムラインに表示されていた発言——「孫娘はまだ見つからないんですか?」——があるとする。「孫娘」というワードから鑑みるに、この発言は少女の母親ではなく、少女の "祖母" であることがわかる。このようにプレイヤーは文中の情報や喋り方から「誰の発言か」を類推して訂正する必要がある。
このゲームの中ではSNSは登場しない。しかし「誰が実際に話しているのか」「話されていることは事実かどうか」など、このゲームが描く "混乱" は、まさに私たちがSNS(要するにX)で見せられ巻き込まれている "混乱" そのものではないか。

また本作ではキーワードがハッシュタグのような形で表示され、そこから別の供述が無差別にリンクしていく仕組みがある。これもまた共通のキーワードで関係あり/なしを問わないポストが無数に吹き出し続ける、Xの現状を感じさせる。

ゲーム中では「鍵がついた供述」が時折現れる。プレイヤーが鍵を外すためには「これまでの供述から事件について読み取れること」を答えなければならない(例えば「〇〇が起こった日付は?」など)。このゲームで唯一の難しい作業として「文章を丁寧に読み、理解する力」が求められるのだ。これはXの "混乱" に対して私たちが唯一抗う手段と言えるだろう。
悲惨を極めるXの "混乱" を、システムに触れることができない私たちが直接解決することは難しい。私たちができることは世界中から溢れる供述の濁流を「正しく読む」ことしかない。
ただ、 "混乱" を助長するシステムに対して私たちには "連帯" する力が残されている。ぜひこの物語の最後まで辿り着いて、それを確認してほしい。