隣の部屋から配給された数個のコロンと共にこれを書いている。あまりお菓子を食べない中でコロンはかなり好きなお菓子の部類に入るのだが、量が物足りないのが残念だ。もっと大袋で売ってくれたらいいんだが。
仕事の合間を縫って読書をするだけで、1日1冊は消費できる。ただ、一度読み出すと基本的に読み切るまでは他の事に手がつかなくなるタチなので、1冊読み終えると次に手を出すのが億劫になるのが問題だ。
それなりにやることも溜まってきた上に、また睡眠障害気味なので早く寝るべき、という日常のタスクが溜まってきている。そのタスクをまあまあ圧迫しているのがこの本の山なのだが、二週間本を借りて読み切ったものを返し、予約したものを引き取る、というルーティンを一度崩すと、また復帰させるのに時間がかかる確信しかない。
ただでさえ金欠なせいで出不精で、寒い(暑い)時期にわざわざ着替え、チャリをだし、図書館まで行くのが億劫な人間なのだ。一度途絶えたら何かと理由をつけてやらない気がする。
とはいえ1,2週間に6冊読むのは、読書に慣れている私でも結構ヘビーではある。それでも、11月から一念発起してせっせと読んでいるのは、最近また一つ理由を見つけてしまったからだ。
母は、読書家というほどではないが本が好きだ。それは、推理小説かだった祖父の影響が大きいのだろう。私ももれなくその性分を受け継いでおり、母が見立てた本の多くが愛読書になった。ペギー・スーやエラゴンはそのうちの一冊で、本が分解するほど読み込んだし、いまだに私の本棚の一角で陣取っている。海外作家が好きなのも、この影響かもしれない。
そんな母と先日話したところ、今は電子書籍を読んでいるという。紙の本が好きだと私がいうと、「もう老眼で見えないのよね」とぼやいていた。そこでハッとなったのだ…とまではいかないが、気づきを得た。まだ20年近く先とはいえ、私にも確実に老眼はやってくる。その頃になって紙の本を読みたくなっても、もう遅いのだと。
電子書籍にもいいところはたくさんある。今更列挙する必要は感じないが、一番の利点は物理的なスペースを取らないことだと思っていた。だが、母曰く文字サイズが調整できるので良いのだという。確かにそうだ。
加えて、敬愛する星新一のショートショートを思い出した。とある男はたいそうな読書家だった。現役の間はたくさんの本を読み漁り、選りすぐった好みの本を家に蔵書として置いていた。リタイア後にその本の内容をそっくり忘れて、また1からあの感動を味わいたいのだと。
男は宣言通り、老後に愛蔵書を開く。もう覚えのない本を読もうとページを開き、読み進んで愕然とする。物忘れが進行しすぎて、前のページにあった内容を覚えていられないのだ。
さすがにここまで酷いことは起きない、と笑い飛ばしたいところだが、星新一ならではのブラックユーモアな点と真理をついた話で、本好きの私の中では印象に残っている。多分、本棚をひっくり返して星新一の本を探せば、今の話も見つかるだろう。私も、二度と新作がでない星新一のショートショートを、大事な貯金を崩すようにチビリ、チビリと読んで楽しんでいる。忘れてしまった話も多いから、そろそろ読み返したら楽しめるだろうか・・・。
そんなわけで、老後の趣味にするには体力も気力も必要だな、と改めて思ったため、この読書習慣をできれば絶やしたくない。実際、昔は気にならなかったハードカバーの本の重みが気になるようになってきた。学生時代は、エラゴンを3冊カバンに入れて登校し、休み時間は机に積み重ねて読んでいたというのに。
そんなわけで、また本を借りてきた。今回は推理もの続きで少し疲れていたので、趣向を変えて、一穂ミチさん作の「スモールワールズ」を読了。
短い話がいくつも収録されているという触れ書きで読み始めたが、私が期待したような星新一のようなショートショートではなく、そこそこの厚みがある話が、4,5本入っているものだった。
劇的な展開があるというわけではなく、現代日本のどこにでもありそうな日常を描きながら、人生のドラマや些細な人間模様、感情などを描いているものが多い。人がどうあがいても死んでいるミステリの箸休めにはちょうどよかった。
個人的には、紹介文などでみかけたような絶賛をするほどではなかったが、たしかに日々感じている気持ちや現代へのままならなさ、そういうったものがきちんと文章とドラマに起こされていて、なるほど共感するひとも多いのだろうな、と思った。
偏った評価だとは百も承知なのだが、私にとっては短編小説の神は星新一のみであり、短編などの小説に対しての批評が厳しい。かつて小説家だった祖父は、実は顔馴染みだったらしいと聞いて羨ましいと思ったものだ。
ちなみに、祖父の本も代表作を読了済みである。本来ならもう少し読んであげるべきなのだろうが、やや時代設定が好みから外れていたりするのと、何せいつでも読める距離にあるため腰が重い…。なんとも薄情な孫娘である。ごめん。一言添えておくと、代表作は面白かった。他の作品はまだわからない…。
仏前では欠かさず線香をあげているので許してほしい。祖父とは一度も会うことができなかったが、もし生きていたならどれだけ可愛がってくれたか…と母からはよく聞かされている。ミステリを読むと、その言葉が思い出されて少し懐かしい気持ちになる。
コロンを食べ切ってしまった。リングフィットをやらなければなるまい。