読書12

akitsu
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忙しさやらにかまけて図書館からしばらく足が遠のいてしまった。やはり借りる、返すのループを途絶えさせるとあまりよろしくないらしい。新しくいくつか予約をしたが、まだ入荷していないようなので待つことにする。

今回読んだのは、相方が買って先に貸してくれていたのに積んでいた本、「天使の囀り」。悪の教典などを書いた人の著作で、ジャンルはホラー小説とのこと。

悪の教典は映画を見たことがあり、なかなか衝撃的&好みだった内容。おそらく1.5ヶ月ほど積んでいたので申し訳なさを感じつつ、2日ほどかけて読了。

以下、あらすじをまとめる練習も兼ねてストーリーを書いておく。当然のことながらネタバレがあるので注意。

話は、高梨という小説家のメールから始まる。それぞれの事情で集まった研究者たちが、アマゾンの奥地で研究史料などを集める旅に同行し、そのルポを雑誌に投稿するというような内容だ。

メールの相手は高梨の恋人であることが窺える。原住民とも関係性は良好で、順調に調査が進んでいたように見えた。だが、途中で高梨を含む5人が道を外れて遭難し、飢えに耐えられず一匹の猿を殺して食べたたところから異変が始まる。

メールを受け取っていた高梨の恋人、早苗はホスピスで働く医師の一人だ。様子がおかしい高梨はしばらく前にアマゾンから帰還する旨をメールで報告していた。

戻ってきた高梨はあきらかに異様な様子だった。徐々に変わっていく人格や異常な食欲と性欲、そして過度な死恐怖症だったはずが、死を恐れなくなっていた。

早苗がその変貌に恐怖感じていたのも束の間、高梨は早苗の前で異常な自殺を遂げる。死恐怖症であったはずの彼の死は、アマゾンでの出来事がきっかけに違いないと感じた早苗は、彼が仕事を受けた雑誌記者とともに調査を進めていく。

その裏で、とある自己啓発セミナーの暗躍が進んでいた。彼らは守護天使の福音が聞こえれば悩みなどがなくなると謳い、悩みを抱えるさえないコンビニ店員や主婦などを集めて「肉」を食べさせていた。実際に彼らは悩みが気にならなくなり、人生の転機を迎えたが、その幸福は長続きしなかった。

調査を進める早苗のもとに、アマゾンの旅に同行した研究者たち数名の異様な死や、同じように不可解な死を遂げた人々の情報が集まる。医療業界のコネと知識を頼りに検死を進めていく。やがて、彼らの死はアマゾンの特定の猿に寄生する線虫であることが発覚する。

線虫研究の第一人者である依田と共に調べを進めると、その線虫は人間の快楽神経を司る部分に入り込み、「恐怖」を「快楽」として受け取るように作り替えてしまう。高梨や他のセミナー参加者たちはは過度な快楽の魅惑に抗えず、不可解な自殺へといたったのだ。

セミナーを通じて感染を広げていた施設を早苗と依田は特定する。そのセミナーを興したのは、高梨と一緒に旅へ出ていた研究者の一人だった。彼は人間の恐怖やストレスを快楽に変える線虫に寄生されることを「進化」と呼び、人類を新たなステージへと至らせるために感染を広げていた。

線虫は初期感染から第四段階までの感染深度があり、第四段階に至った場合はどのような被害が出るか想像もつかない。セミナー主催の「オフ会」が催されていた施設に、早苗と依田は侵入するが…。

非常にかいつまんだあらすじだが、ざっとはこんな形になる。実際にはエイズやホスピスでの終末医療、安楽死などの複雑な社会・医療・動物学的な要素が絡み合っている。前情報を一切仕入れずに読んだおかげで、生物感染系ホラーであったことがわかり笑顔になった。実はあまり読んだことがない…のと、実映像になるとどうしてもグロくなるので苦手だからだ。

著者の様々な下調べと裏打ちされた知識から描かれる描写や、この先どうなるのだろう?という引きの強さ、悍しくも線虫という元凶だけが悪というわけではない、という多角的な視点を持った形でとても面白かった。

調べてみたが映像化はされていなかった。コミックはあるようだ。うーむ、たしかにこれは圧倒的グロが後半に待ち構えているので、映像化は厳しいかもしれない。

また、有り体かつXXっぽいという言い方はあまりよくないと思いながらも、あえて書くならば、非常に「クトゥルフ神話TRPGっぽい話」だな、とは思った。でもそれは当たり前だ、ホラー小説なのだから…。

実際、クラシックシナリオでこの話をお出しされたら「後味最悪だけど最高〜〜」と言って笑顔で通過した自信がある。最近とんとクラシックなシナリオからご無沙汰しているので、始めた頃の懐かしい気持ちに浸れた。

寄生虫系ホラーは確かにぞっとする上に肌がむず痒くなるので、苦手な人も多いだろう(私も大得意というわけではない)。だが、現実として人間の体には結構な数の線虫や寄生虫がいるし、我々が普段食べている食物にもしこたま潜んでいるので、まあ現実が一番のホラーであるかもしれない。

@akitsu
びっくりするほど飽きっぽい