読書その6

akitsu
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読了してわりとすぐに書かなければ、サボりがちだと気づいた。正月中に読了したいという願いは叶ったので、明日にでも延滞申請を出した6冊を返しに行こう。2週間ちょっとだったので、そこそこのボリュームだ。

読了したのは二冊。どちらもシリーズものの続きだ。

魔眼の匣の殺人。屍人壮シリーズの二作目。このあとに三作目に続く形になるので、終盤の方には三作目の伏線が引かれており、読了した身からすれば「なるほど」という頷きがあった。内容としては予言を中心としたクローズドサークルで起きる殺人で、特殊設定ミステリと特殊な館ものという設定を存分に活かしたミステリだった。

個人的にはパニックホラーものの1作目と3作目の方が好みではあった。この手の予言めいた見立て殺人のようなものは多数あるため、少し目新しさには感じられなかったものの、それでも設定と葉村くんと比留子ちゃんの関係性がよく描かれていて、楽しい。しかしよく人が死ぬなあ…いや、ミステリならば当たり前ではあるのだが。自宅に氷菓もあることだし、そろそろ人が死なない日常ミステリものにも手をだすのはアリかもしれない。

そう考えると、ロードエルメロイの事件簿はFateユーザー向けとはいえ、魔術に関しての説明や考察、特殊も特殊のミステリの中でよくあれだけの要素を組み込んだ上でミステリに仕上げているな、と思う。残念ながらそもそも第一シリーズすらもったいなくて読み終えてない軟弱者なのだが、そのうち覚悟は決めようと思う。あちらはどちらかというと、推理✖︎アクションバディな味付けがやや濃いような気もするが。

次に「inventⅡ 覗き窓の死角」。霊媒探偵の城塚翡翠シリーズの3作目…と、また巻数を飛ばして読んでるのだが、まあこれはきちんと気づいた上で読んでいるので安心して欲しい。というのも、図書館の予約で巻数予約をしなかったせいで、準備ができたものからバラバラに寄越されるため、あまりわがままもいってられないのだ。

とはいえ、屍人シリーズのように下地になるような特殊設定があるわけでもないので、そのまますんなり読んで問題はなかった。やや2作目のネタバレの匂わせがあったが、まあ問題はなかろう。もともと私は、作品の犯人やら誰が死ぬかを知っていても「過程」が知りたいと思えば全然楽しめる。

さて、私はわりとこの作家さんの二段仕掛けのどんでん返しのやり方が好きなので、今回も期待して読んだ。さすがに1作目のような衝撃はなかったが、それでもやはり倒述トリックとしてはかなり面白いと感じる。それもこれもあまり犯人視点のミステリを読んでなかったので、新鮮味がまだ感じられるだけかもしれないが…とはいえ、ここ最近で読んでいるこの手の描き方は結構好きなので、おそらく性に合っているのだろう。

翡翠のキャラクター性はたしかに女性から見るとイラッとするような形に描かれているが、それも計算づくで書いているだろうからあまり気にならない。普通に可愛いし。思えば女性二人のバディものは珍しく読んでいる気がするので、まだまだ浅い読書経験だとつい反省してしまう。

シリーズものを二作通して読み終え、比較的どちらの作品にも共通して描かれている——というか、やはり流行りと皆が好きなテーマである「探偵と助手」の関係性が色濃く描かれている作品は例の如く好みらしい。比留子も翡翠も、自身につきまとう呪いや因果、死の匂いに悩んで迷いながらも、自分なりの意思や信念を貫き通す。そしてそれを支える、凡庸でありながらも探偵(ホームズ)にとって不可欠な存在である「助手(ホームズ)」との関係性は、やはりどういう関係でも物語として面白い。

殺人ありきのミステリにありがちではあるが、探偵がいくところ「死」が付き纏うという概念を逆手にとった設定などが散見される。また、ミステリも長い長い歴史が折り重なり、その折り重なったものこそを「トリック」や「謎」、動機として今の作家たちが利用し、さらなる発展を広げようとしていることに、ミステリ業界の面白さを感じる。まあ、十把一絡げにしてしまえばミステリに限らず創作分野すべてがそういう切磋琢磨の上に成り立っているわけだが…。ミステリは読者の目も肥えているだろうから、トリックの重複なども許されにくいところも悩みの種だろう。そんななか、編集部の目を通った上で世に御目通りが叶っている作品たちと作家には頭が下がる思いだ。

ミステリといえば、十角館の殺人のドラマ実写化が騒がれていた。2,3年前に読んだはずなんだが、とんと覚えていない…。もともと、読むペースはわりと巻いている代わりに細部を覚えていないことが多いため、気に入った作品は何度も読み返して記憶を補正する、というやり方をしている。つまりお気に入りにカテゴライズされなかった作品はわりと印象的な部分以外、忘れがちだ。

それでいうと、翡翠シリーズと硝子の塔は手元に置いておいてもよいかもしれない。やるとしても文庫がいいんだが…望み薄だろうか。また今年の年末には、手元におきたい本を厳選して3,4冊買うのも良いかもしれない。絞らないと引っ越しのときに地獄をみるのは私だ。

さて、新年が明けてはや5日も経っているわけだが、読書目標を決めようとおもう。…のだが、100冊はおそらく半年も保たないような気がする。このペースで読み続けるかはともかくとしても、年内に100冊は余裕だろう。誰か、「死ぬまでに読んでおくべき著書リスト」みたいなのを作ってくれないだろうか…。文章の好き嫌いはあまりせずに読みたいので、まあまあノンジャンルで読みたいところはある。ホラー系列にも疎いので、ぼちぼちスピルバーグなどを読み返すのはアリかもしれない。他にも羊たちの沈黙、ハンニバルなど…この二つは学生の頃に読んだのだが、遠い過去の記憶だ。

そんなことを思いながら、今手元にある祖父の著作のことも考えている。前も書いたが早いうちに亡くなってしまったため、推理小説家だった祖父のことは詳しく知らない。前に祖母の家を整理しているとき、無数の原稿用紙と著作、サイン本などの痕跡と、祖母や母たちが語る思い出話の中でしか祖父に会えないのだ。そして、肉筆の原稿用紙はとんでもない悪筆なので読むことはできない。すまない祖父。ちなみに母も解読が困難らしい。担当編集は大変だっただろうな。

有名な著作だけは読んだが、他はまだ読んでいない…。新版となって刷り直されており、イマドキなイラスト作家の表紙に彩られた新著は、昭和ブームも相まってミステリマニアの中ではかなり好評なようだ。とはいえ、徐々に理解しつつある私のミステリの好みは特殊設定や現代ものなので、昭和を中心に舞台に書かれた祖父の小説がどれぐらい刺さるか、わりと自信がない…。感想を言う相手がいないのは幸か不幸かはわからないが、血縁の本かつそれなりにいい賞を受賞した祖父の本が微妙だったときは申し訳ない気持ちになるだろう。

でも、きっと祖父が生きていたならば、私はもっと早くミステリを読みあさっていただろうなとは思う。ものを書く人間として、ミステリをどのように組み立て、トリックを考えていたのか、聞きたいことは多かった。このへんは、パパっ子だったらしい母に聞けば、多少はわかることなのだろうが。

今更こうして祖父のことを時折思い返すのは、読了した本の感想を言える相手がいないことに寂しさを感じているからだろう。普通の本ならともかくとして、ことミステリに関してはオチやら何やら全てひっくるめて、読んだ人間としか語り合えない感想がある。先日のパラノマサイトもそうだが、鮮やかな脚本はやはり「何が面白かったか」を他人に話してはじめて、自分でも気に入ったところが見えてくると言うものだ。

前もここで嘆いていた気がするが、娯楽が多い現代において、よほど熱心にプレゼンをしなければ他の人間はおよそコンテンツに手をださない——ましてやゲームではなく、本だとなおさらだ。読書習慣がある人間はもう少ない。個人的には2時間内で一冊の厚みが読了できるなら、映画やゲームよりはかなりコスパがいいと思うのだが…。

核心に触れずに面白さを語ることもできはするのだろう。そして、私が本気を出せば多少なりとも伝わる人はいるのかもしれない。ただ、それをするほど私は人好きでもなくなってしまった。やはり、熱心に布教してハマッてくれれば嬉しいが、かじってみたりしてNOと言われたときはがっくりくる。そして、こちらにはそれを責める権利は絶対にない。それがよくわかってるからこそ、私はぼやくだけで熱心な布教をしようとはしない。

好みを把握した相手にですら布教するのが億劫なのだ——ここまで考えて、旦那に何かを布教したことがあまりないことに気づく。ううん、旦那から布教されて手を出すことはままあるが、私から何かを布教したことはあまりないな。というのもわりと好みが違うので、布教したのにやらないと私が不機嫌になったり喧嘩の元になりがちだからだ。いや、これに関して別に不満をもっているわけではないが、「共通の好み」と「布教する/される」とは全く違うということだ。

さて、明日返しにいくわけだが、予約した書籍の順番待ちのせいで次に借りる本が揃っていない。とはいえ、返したら借りるのループを作らないと絶対に途切れそうだ…。もっとミステリホラーな作品が読みたいのだが。ううむ。京極夏彦あたりにそろそろ挑戦してみるか…。推理小説家の娘であり、わりと京極さんの作品は好きと言っていた、読書耐性のある母ですら「全部読みきったことはない」と溢していた京極夏彦の…鈍器のような本。魍魎の箱と姑獲鳥の夏?が有名だったか。あの辺は近所のボロボロ図書館でもさすがに在庫があるだろう…。一冊だけ借りて挑戦してみるか。

@akitsu
びっくりするほど飽きっぽい