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フロントエンドの死

alesion30
·
公開:2026/5/20

私は理想的なユーザー体験をソフトウェアとして表現することを愛していた。ビジネスが市場を発掘し、デザイナーがユーザーニーズをユーザー体験に落とし込み、エンジニアがソフトウェアとして具現化していく。私はエンジニアの中でも特にWeb・ネイティブアプリを開発するいわゆるフロントエンドエンジニアが、ユーザー体験を創る最後の要だと考えており、ファーストキャリアとしてWebフロントエンドエンジニアとして道を歩むことにした。なぜネイティブアプリではなくWebを選んだのかというと、これからの時代、スマホだけでなく、VRやAR、ウォッチデバイスといった様々な媒体でユーザー体験が提供されるのが当たり前になっている一方、Web技術も年々進化しており、これらの媒体のソフトウェアがWeb basedな技術で提供できる時代が来ると考えていたからだ。

しかし、AIの進化により、フロントエンドは死んでしまった。ここでいう死は、二つを意味する。

一つ目は、フロントエンドエンジニアの死だ。2025年を境にAIは急激に進化し、誰でも速くそれなりのクオリティのソフトウェアを構築できるようになってしまった。それによって、世の中にはソフトウェアが満ち溢れるようになり、ソフトウェアを作れることの価値は薄れてしまった。これらに対して競合優位性を取るには、他に真似できない複雑で大規模なソフトウェアを構築することだ。がフロントエンドエンジニアだけで大規模なソフトウェアを作るのは難しく、複雑な仕様をシステム設計として落とし込んでいくバックエンドエンジニアが主役であり、事業に対して大きな価値を生む存在となっている。現にここ一年、比較的大規模なソフトウェアの開発チームに属しているが、フロントエンドエンジニア達は事業に対して大きな成果を生み出す動きが取れず、バックエンドエンジニア達ばかりが常に忙しくしている。

二つ目は、フロントエンド自体の死だ。AIの進化により、そもそもサービス提供者がUIを提供する必要性がなくなってきている。サービス提供者がAPIないしMCPを提供すれば、ユーザーはChatGPTのようなチャット形式の対話型インタフェースを通じてサービスを傍受できるし、ユーザーがリッチなUIを望めば、AIで各々好きなUIを作ればよい。サービス提供者がこれまでターゲットユーザーに対する需要を汲み取り、UIとして表現してきたが、全てのユーザーに望むUIを提供することは不可能だ。しかし、これからの時代はユーザーが各々好きなインタフェースを用いてサービスを傍受する世界がもうそこまできている。これが意味することは、UIを提供するのはサービス提供者でなく、プラットフォーム提供者である。プラットフォームの勝者は限られてくるので、UIを提供するフロントエンドの需要は急激に下がっていく。さらに視覚情報に頼らないインタフェースも今後増えていくと考えている。代表的なものはAlexaやGoogle Nest miniなどのような対話型音声デバイスである。私はGoogle Nest miniを愛用しているが、昔はあまり使い物にならなかったが、Geminiが搭載されたことにより、数段賢くなり、できることの幅が広がった。視覚情報以外の人間の五感に入り込み、日々の生活により溶け込んだインタフェースが今後主流になった世界で、そもそもフロントエンド自体が必要なくなるかもしれない。

そうしてフロントエンドエンジニアとしての未来に悲観してしまった私は、適応障害と診断されてしまった。