トヨタ生産方式は、日本から生まれて世界的にも影響力の大きい生産方式として、名前だけは軽く耳にしたことがあった。ただ、実際にどういうものなのかはちゃんと理解できていなかったので、生みの親である大野耐一さんの本を読んでみることにした。

アメリカ式の大量生産は、同じものを大量に作ることで効率化を図る考え方だ。それに対してトヨタは、多品種の製品をいかに効率よく作るかに挑戦し続け、その結果としてトヨタ生産方式を編み出した。多品種を作ることと効率よく生産することは本来なかなか両立しないはずで、そこを両立させたのがこの方式のミソであり、正直めちゃくちゃすごいと思った。
掲げている理想は、ある意味で絵に描いた餅のようにも見える。それでも、ムダを徹底的に排除するために様々な工夫を積み重ねて、実際に形にしている。その柱になっているのが「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の2つだ。
ジャスト・イン・タイムは、必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産し、後工程が前工程から必要な分を引き取るという考え方だ。言いたいことは分かるが、現実にはかなり難しい。それを各工程のたゆまない努力によって実現しているのは本当にすごいと思った。特に「かんばん」の仕組みには素直に感動した。どこで何がどれだけ必要なのかを、リアルタイムに前の工程へ伝えられる。コンピューターが普及する以前から、こうしたリアルタイムな情報の伝播をやっていたというのは、工夫次第でそういうこともできるんだなと思った。ジャスト・イン・タイムによって、作りすぎて在庫を抱えたり廃棄したりするムダがなくなる。アメリカ式なら、ムダが出てでも大量生産でコストを下げるという発想になる。一方でトヨタは、多品種を作る前提のうえで、そもそもムダを出さない仕組みでコストを下げにいく。その考え方がジャスト・イン・タイムに込められているのだと思う。また、ジャスト・イン・タイムを実現するうえでは、生産量の平準化も重要になる。量の偏りをならして一定のペースで作り続けることを、かんばんの仕組みと組み合わせて実現しているのも本当にすごいと思った。
自働化は、ただの「自動化」ではなく、ニンベンの付いた「自働化」だ。単に動くだけの自動化なら、異常があっても、目標に達していなくても、動き続けていれば自動化できたと言えてしまう。しかし自働化では、異常があればきちんと止め、不良品を後ろに流さず、改善してからまた働かせる。機械を「動かす」のではなく「働かせる」ことを強く意識した言葉なのだと感じた。
こうした考え方は、ソフトウェア開発にもそのまま活かせる部分が多いと思う。特に、ただ動くだけでなく、ちゃんと「働く」ものを作るという意識は、ソフトウェアやプロセスを設計するときに心がけたい。異常があればすぐに止めて、問題を後ろに流さない仕組みを作ることも大事だと感じた。アウトプットについても同じで、意味のないものを出し続けるのではなく、必要なものを、必要なときに、必要な量だけ出すことを意識したい。そうやってムダを徹底的に排除していくことで、さらに生産性を発揮できるのではないかと考えさせられた。これからも、自分の仕事のなかにあるムダを見つけて減らしていきたい。