
「左利きのエレン」は、凡才の広告デザイナー・朝倉光一と、圧倒的才能を持つ天才画家テンプレート山岸エレンの2人を中心に描く群像劇で、高校時代に出会った2人が、挫折や葛藤を抱えながらも「何者か」になるためにもがき続ける、リアルな人間ドラマを描いた作品である。
自分も漫画を全巻持っており、今放映中のアニメも観ているほどのファンである。
そしてたまたまAmazonのおすすめにこの本が出てきて、ついつい買って読むことにした。この本は、スポーツ心理学を専門とする著者が、左利きのエレンの登場人物の心理を紐解き、現代社会を生きる人々が得られる学びを言語化してくれたような本である。
世の中の人々は、自分の希少性は比較や評価から考えられるものであって、認知的社会で戦い、勝つための武器やカードという発想になってしまい、結果、苦しんでいる。認知的とは、結果や外界を大事にして、承認欲求や社会的欲求を満たそうとする文明を発達させ、この世の中を形成している人間の脳の働きである。我々は認知脳に支配されている。
筆者は、勝つための武器ではなく、「あなたらしさ」という才能や武器があるのだということに気付いて、内発的な動機、すなわち非認知的な脳で生きていくことこそが、何よりも大事であると主張している。非認知的なスキルを磨いていくためには、自分の内側に今この瞬間に生じている自分の感情に気付き、それを言語化する練習をする必要がある。全ての仕事は自己表現であり、練習と努力により身に付けてきたスキルだけでは不十分で、そこには経験に基づく感じる力が大切である。
非認知的なスキルを磨き、「今、ここ、自分」に集中した状態を作ることで、心が整った自然体な状態となり、何かにたいして集中しやすくなる。これが所謂、フロー状態である。
大人脳が認知的だとすれば、大人になっても自ら楽しく生きている人は子ども脳とも言える非認知脳を忘れずに働かせて生きている人なのだと言えるだろう。しかし、子供脳だけで生きていくのは不可能なので、認知脳と非認知脳の二つの脳を働かせていく必要がある。このことを筆者はバイブレインと呼んでいる。
最近読んだ自己啓発の本も軒並み、今ここ自分に生きることの重要性を説いている。考えても仕方のない過去や未来に囚われるとパフォーマンスが落ちることは身に染みて分かっている。外から決められた評価や環境に囚われると苦しいことも分かっている。自分は今まで認知脳に支配されていたことを自覚する必要がある。内面に目を向け、感情の揺らぎや行動の動機をよく観察することから始め、自然体とのギャップを常にメタ的な視点で捉え続けていきたい。