山に登らないかと誘われることも人生にそうそうないだろう。そう思って気軽に応じたら、とんでもなかった。
糸島にある立石山はとにかく崖。ロープを伝ってよじ登る。ハイキング程度の低山と聞いていたが、命懸けの登山だった。先人たちが踏み固めた場所を頼りにしながら、風景を楽しむ余裕はなく、山頂らしき場所に辿りついた。風が強く、飛ばされたら…と何回か思った。さあ、下山だと思ったら、山頂はまだ先、と居合わせた山の達人たちが言う。驚きながら進むと、山頂らしき看板があり、私達はそこでしばし休憩した。
それからが大変だった。いま来た道ではない方向から下山しようと試みると、山の達人がそっちから行くのかとわざわざ声をかけに来た。その意味はすぐに分かった。崖と崖の間を進む。断崖絶壁(少なくとも私にはそう見えた)では強風にあおられ、ロープを持つ手に力が入る。足を踏み外して落ちるんじゃないか…。
同行した知人は、私が今まで見たことないくらい必死な顔をしていたので頑張って励ましたと後から教えてくれた。自然を前にしたら、取り繕うこともできないわけで、取り繕う正体とは一体なんだろうとも思う。
海にそびえ立つ山は、山と海を同時に楽しめ、どこでも絶景スポットだと思う。怖すぎてあまり写真は撮れなかった。けれど、下山したら眼前にビーチが広がり、それはそれは穏やかで静かだった。
お昼には海の幸をいただき、お店を変えて珈琲でくつろいだ。