遅ればせながら「傲慢と善良」辻村深月 を読んだ。
読者を物語に引き摺り込む筆力はすごい。
イマどきの読者にウケそうなフックが沢山散りばめられている小説。
読む者の心を逆撫でするような描写。
悪気のない、だからこそタチの悪い傲慢さがここぞとばかりに描かれる。
そして、登場人物があまりにも幼稚なのが気になった。
もちろん、小説なので、わかりやすく単純な人物造形にしているのはわかるけど。
よくもまあ、あのつまらない結末までミステリー仕立てで読者を引っ張っていくよなーって感心しました。
(褒めてます!)
そして、この小説がマッチング読書会の課題本になったのが凄いと思う。
マッチングが前提の会で、いったい、どんな顔をしてあの小説を読むのだろう。
いきなり自分の傲慢さや醜さを吐露して泣きじゃくったりするのか?
それとも「まあ、こんなことは常識でしょ」みたいな涼しい顔で読書会が終わったのか?
それはそれで、恐ろしい気もするが…………。
そして、「ばにらさま」山本文緒 なのである。
様々な雑誌に掲載された短編を集めたものなのだが
さすが、山本文緒っ!と唸ってしまうような短編集。
その筆致に舌を巻く!
特に印象に残ったのが本の最後の短編「子供おばさん」
読んでいて、思わず、うぉーって声が出てしまった。
物語をあらすじにしてしまえば、何ということもない話なんだけど、
なにしろ文章のドライブ感が凄いのである。
それにしても、惜しい人を亡くしたよね。
なぜ、そんなに早く死んじゃったんだろう……
僕より2歳も若いのにさ!