わたしはどうもあまり真面目に人生ということを考えていないらしいのだ。別の言い方をすると、自分の生きているということに対して、熱心になれないし、どうでもいいことのような気がしてしかたない。日々なんとなく時がすぎて行くことだけをたよりに当面の原稿のしめ切りを月日のめやすとも目的ともして、変わりばえのしない毎日をボンヤリすごしていると、本当に何のために生きているのだかわからなくなってしまうのだ。
金井美恵子『書かないことの不安、書くことの不幸』より
初めてこの文章を読んだ時、自分自身のことかと錯覚しそうになった。物心がついた頃からずっとこんな心持ちで生きてきた気がする。受け入れ難い怒りや悲しみに襲われた時でさえ、心のどこかでどうでもいいと思っている自分がいた。時間が経ってしまえばなおさらだった。