私は海のない町で育った。そのせいか夏以外でも何となく海に行きたくなる。時々、海辺で暮らしている人が羨ましいとも思う。朝起きたら窓の外に海が見えるとか、歩いてすぐの場所に静かな海岸があるとか、一度はそんな場所で生活してみたい。
先日、ふと思い立って海まで出かけた。もう少し正確に言えば、目的地を変更して海へ向かった。車の免許を取り立ての大学生みたいなノリで。その日は晴れていたけれど風が強かった。海なんて行ってる場合じゃないくらいに。案の定、堤防を越えて海岸に降り立つと体が飛ばされそうなほどの海風に吹き付けられた。髪が乱れるどころの騒ぎじゃなかった。
のんびりとシーグラスでも拾いたかったけれど、春の嵐の激しさと冷たさに耐えられなくなって早々に退散した。一枚だけスマートフォンで写真を撮って。
消波ブロックを乗り越え、びっくりするぐらい大きな流木が海岸に横たわっていた。海は濁っていたし風も凄かったけれど、これを見られたので結果オーライということにした。次はもっと穏やかな日に海へ行こう。
海のない町で生まれた二人の話。海へ行くと彼らのことを思い出します。よろしければご一読ください。