木の下に行って、薄紅色の落葉を手にすくい上げた。家に帰ると、ガラス瓶に入れた。部屋の中には私のほかに生命体は存在しない。しかし葉にはまだ生命のエネルギーが残っていた。私はそれを体内に凝固して排出されない血の塊の代わりにし、口に出せない言葉、投函できない手紙、それから中に潜んで涙腺を塞いてしまった涙の代わりにした。木の葉の色は刻々と変化し、鮮やかな赤から薄い黄色になり、薄い黄色からさらに濃褐色になった。それから、少しずつ砕け、最終的には粉末と化した。その頃、私が外に出る目的は、落葉を拾って、物質の変化を目に収めることだった。
韓麗珠『秘密警察』より
あと二作で『絶縁』を読み終える。統一感のある短編集も好きだけど、アンソロジーもやはり面白い。
小説の中で気になる文章を見つけた時はその部分に付箋を貼るようにしている(昔は手帳や雑記帳にその文章を書き写していた)。後から何度も読み返すというわけでもないのだが、どういう理由かそうせずにはいられない。ここにも気が向いたら書き留めておこうと思う。