さくらんぼ

雨宮
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今日の昼頃、実家から母の日のプレゼントが届いたと連絡があった。母と別々に暮らすようになってからずいぶん経つ。毎年、母の日には何か贈るようにしているが、実際に会うことはほとんどない。母とは決して仲が悪いわけではない。でも、普段からマメに連絡したり何でも報告し合うような関係でもない。特に私が社会人になってからは物理的な距離が離れたこともあり、私の生活から母の影はどんどん薄くなっていった。

傷つけたこともあるし傷つけられたこともある。母のことは尊敬している。未だに優しくできない時もある。いつか、彼女がいなくなってしまうことが怖い。

ピアノの先生に怒られて泣いて帰った日、エプロン姿のまま台所で抱きしめてくれた。大学生で一人暮らしをした最初の夜、彼女の口から初めて「寂しい」という言葉を聞いた。社会に出て働き始めたばかりの頃、風邪をひいて、精神的にも参っていて、電話をしていたら思わず泣いてしまった。その日、車で何時間もかけてお父さんと一緒に私の住んでいたアパートまで来てくれたよね。栄養ドリンクと、ビニール袋いっぱいに私の好きな物を買い込んで。

私のことを大切に育ててくれてありがとう。私のことをきちんと手放してくれてありがとう。あなたが幸せならそれでいいと言ってくれてありがとう。

私たち親子はたぶん、お互いにとって理想の母親でも娘でもなかった。特に私は、母にとって良い娘ではなかった。それでも、ある時点に置いて彼女は、私のことを世界で一番愛してくれた人なのだと思う。もっと歳を重ねて、いつか来る別れに心の準備ができていたとしても、実際にそれが現実になった時、私はあり得ないほどに泣くのだろう。

生きることに嫌気が差しても、決して母より先には逝かない。私にできる親孝行はそれくらいだ。花を育てるのが好きで、果物に目がない人。今年はさくらんぼだったから、来年は花を贈るよ。お母さん。

@amamiya
気軽に文章を書きたいだけなので特に目的はないです