てことで、バイトに慣れてくると段々と自分の常連さんが付いてきてくれるようになった。店の雰囲気もあってか、元々私のいた時間に来てくれていた常連さんがそのまま自分のお客さんになった。中には来なくなってしまった(来店日を変えた)常連さんもいたけど、それは仕方がない。不定期だった自分のバイト時間が固定されて、わざわざ合わせて来てくれる常連さんもいる。
気心知れた常連さん相手は楽しかった。もちろん、一見さんも常連さんも全く区別なく同じように接客した。(特に指定がなければ)珈琲も同じ味になるよう努力した。
同じ味で提供するのは意外と難しい。
同じようにいれても、決して同じ味にならない。水は水道水を使う分には変わらない(同地域なら無視して良い違い)。豆の鮮度はどんどん変わる。室温も外気温も、天候も湿度も変わる。このあたりは練習で何とでもなる。一番難しいのはお客さんの気持ち。
一見さんには割りと無難なように供出すれば、大きくは外さない。難しいのは常連さん。来店時の様子を見て、濃さ、熱さ、見栄えを微妙に変えていく。ここの見極めには時間がかかった。更に供出するカップも。ま、常連さんには、だいたいお気に入りのカップがあるからそれを使えば良いけど、偶に変えてみると新鮮な気持ちになるので良い。など。
一番心がけていたのは、決して出しゃばらない。過度に親しげに話さない。常に半歩下がる気持ち。でも卑屈にはならない。政治と野球の話にはできる限り乗らない。否定も同意もしない(笑)忙しい時は常連さんは基本放置(たまに話す)カウンターの内と外では必ず一線を引く。これを心がけることで、常連さんの信頼も得られて、楽しいバイト生活に突入した。