お日さまが気持ちよかったので仕事を終えたら散歩をしようかということになった。仕事を終えた時間からも散歩ができる季節になったことが嬉しい。厚いセーターを着、コートは羽織らずに出掛ける。
仕事でへとへとのSは少し歩いただけで顔色が悪くなってくる。何も我慢して出てくることないのに。忙しくて二人で出掛ける時間が作れないため、わたしは少しの散歩でもわーいと盛大に踊って喜ぶ。だからって無理しちゃだめでしょと背中をごしごししてあげる。
日の当たるベンチに座って色んなことを話す。この間一緒にご飯を食べた友達の話とか仕事中に出会った家具の不具合のこととか。隣のベンチには純白の髪の、イエローの服がよく似合う方が座っていた。ラジコンやキックボードで遊んでいる子供はいるけどまだドローンを飛ばせている子供は見かけない。公共の場で飛ばせるのはまだ許されていないのかな。
宝くじを売っているような、昔からある町のおじさんたちが集まるようなカフェに行く。ここのコーヒーがすごく美味しいから。フランスでは一番安いコーヒーはエスプレッソのことをいう。私はそれにミルクが入ったものが好き。ノワゼットと言えばそれが出てくる。2€ちょっと。10年前には1.9€くらいで飲めた。
こういうカフェは大抵むさくるしくさびれた空気があるイメージだがここは何だか居心地がいい。カウンターには変な造花があるし競馬のテレビがいつも流れているしひとりごとを言っている老人がいるし金曜の夕方なのに客は少ないし入りづらい感じがあっても不思議じゃないのに、何故か落ち着く。荷物を牽くタイプの競馬は、普通の競馬みたいにゲートに入らずに、長い横棒を引きずった車(つまりそれがスタートラインになる)の後ろにぞろぞろと着いてきていつの間にかスタートになることを知った。そうだよね、同じ仕組みだったら荷車が引っかかって出られない馬が続出する。スタート地点から既に追いついていない馬がいるが、構わずにずるずると始まる、そんなものらしい。おおらかなレースだ。