62. 『雪』、ためらいの声

アマヤドリ
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オルハン・パムクの著作を読んで改めて、イスラム世界のこともトルコのことも(芸術や生活、歴史も含めて)をほとんど知らないと感じている。今読んでいる『雪』にもケマル・アタテュルクが出てくるけれど歴史上の偉人ということ以外ほとんど知識がない。トルコの作家は他にエリフ・シャファクを1冊読んだがそのくらい。食べ物や装飾が気になりつつ手をつけないことで空想を膨らませておいたようなところがあって、でもそろそろ少しずつ着地させてみたいな。知識として知りたいというよりは本や映画などから断片的に雰囲気を掴み取ってみたい感じがしている。

『雪』はすこしさみしい物語だった。雪を描写したシーンはたくさんあるのにそのどの景色も止まっていたような気がする。近代のトルコという国の立ち位置のようなものが主人公にてらされているのだけれど(だと思う)、大きな空想を抱きながらも小物に描かれていたのが、読後にかなしみをさそった。


ほんの少しでもためらったことは、いったん止めるべきだ。あとからそのためらいの声をよく聞いて、それから行動したって遅くない。違和を感じながらも足を止めなかったことのほうが、あとあとしまった、と思うことになる。