33. 今年の抱負、目が吊り上がってる、春を告げる

アマヤドリ
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底力をつける、というのが今年の抱負なのだが(今決めた)、先日友人と会ってみて当たり前と自分が思い込んでいるところに立ち戻ってみようという気持ちになって、たぶんそれは良いことになりそうな気がする。ほんらいの目的から外れたとしても、思いがけないものが手元に残って、そのことのほうがじわじわと効く、ようなことは時々ある。

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マルシェに行く道すがら、車やバイクの顔つきをひとつずつ見ながら「これは悪そう」「こいつは後ろのワルに怯えてる」「きょとん顔」「閻魔様」などと性格診断をしている。最近の車の顔は怖い。バイクだと目が吊り上がっているどころかもう縦に近いようなものがあったりして、前輪が二輪だったりすると牙を剥き出しにしているようにしか見えない。あとサイクロプスもいる。

横断歩道で車と鉢合わせた時に、譲ってもらったり車に行かせたりする場面があると思うのだけど、わたしは昔からドライバーと目を合わせるよりも先に車の目を見てしまうので「俺は進むぞ」という顔をしていたら止まるし「どうぞどうぞ」という目をしたら渡る。もちろん危ない。つい車の顔色を伺ってしまう人はいると思う。車を作った人はどうして車の前面を顔みたいにしたんだろう。顔に見えるからにはもうちょっと可愛げのある風貌にしたらいいのに。

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明け方にクロウタドリが鳴くのが聞こえる季節になった。私がフランスに来たのは夏で、この鳥の声を初めて聞いたのがその季節だったからしばらくは夏の鳥かと思っていたのだけれどそんなことはないのだった。うちに長く住んでいた小鳥がこれから寒くなる季節なのに冬の羽根を落としてまる禿げになるように(何故なんだ)、クロウタドリももう春の匂いを嗅いでいるんだろう。もし私が日本にいたときみたいに早朝に起きてぎゅうづめの電車で出社するような生活をしていたとしたら、クロウタドリは締め出してできるだけ速やかに二度寝にかじりついたことだろう。