6. 受け身、煙草

アマヤドリ
·
公開:2023/12/20

訃報を受けてその人の作品を読むとか、戦争が起こってからその問題について勉強するとか、後から追いかけることばかりしている。そんなの現在に生きていなくたってできるじゃないか。

-

煙草は2015年の12月にやめた。だけど友人と熱の入った話をする時、ひとりでふらりとカフェに入る時、かたわらに煙草があれば間がもたないということなくそこにいられそうだなあと思うことはある。紙にバニラの香りの葉を詰め、フィルターと共にきつく巻く。ゆるいと空気が入りすぎてすぐに燃え尽きてしまう。少ない葉を細く巻くのが好きだ(節約のためにも)。紙は厚すぎず、匂いのないもの。時々薬くさい紙があるので注意。葉はどちらかといえばミントのようなすうすうするものより甘くて重めの香りが好き。バニラやキャラメルのような。チェリーはものによっては酔いそうなので避ける。

ベルリンに住んでいた頃はまだ煙草が手放せず、降りる数駅手前から電車の車中で巻いて改札を出たらすぐに火をつけていた。何故なら外は寒すぎ(その年は大寒波が来ていて日中でもマイナス15℃くらいになることもざらだった)、手がかぢかんでうまく巻けないから。東ドイツ側に住んでいたから駅を降りても人がおらず、だからといって歩きタバコをしていい免罪符にはならない。

パリこそ煙草の似合う町のような気もするが、フランスに来てからすぐぱったり吸わなくなった。何十年も吸って気が済んだのだと思う。ちょうど8年前の今頃。次の年の3月に一本だけ久しぶりに吸って、具合が悪くなって、それから触れていない。