こんなに気持ちよく明るい光が差し込んだのは久しぶりだった。見渡したら遠くの低い空にいろんな種類の雲が折り重なって陰を作っている。いっときの晴れ間であるようだ。ついこの間見た映画の、雪崩に閉じ込められた人々が小さな隙間から覗いた太陽に跳ね上がるように力を蘇らせていたシーンを思い出す。まぶたにあたたかい光を浴びながら思いがけなく心が晴れやかになる。太陽をありがたいと思うようになるとは。
数年振りに話したからお互い少しずつ変わっているのに、でもまるでつい最近にもこんなふうにじっくり話したんじゃないかと思うくらいに近かった。話してくれたことを読み解こうとして、さらに潜ってゆこうとする。香りをつかまえたらためらわず言葉にしてみる。信頼しているからできる会話。
友だちのご両親と会って、自分の親のことを思い出す。あまり連絡もしないけれど(お互い元気にやっていると信じてるから)、でもなんだか少し会いたくなった。いつ日本に帰れるだろう。
この時期にたとえいっとき暖かくなったとしても春はまだまだ先だ。これから冬に突入するんだから、くらいの気持ちでいないとパリの長い冬を乗り切れない。そう思いすぎて感覚的にはまだ1月のように思っていたけど今日から3月なのだった。3月。もしかして春は少し近づいているんじゃない?今日のあの日差しを「騙されんぞ」と跳ね除けないでもいいのでは?