28. 足踏み、ちょうどそれだけの重み

アマヤドリ
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目覚めたら一面雪だった。

うわあ真っ白…!と嬉しい気分になるのは子どもの頃から変わらない。

出窓の植物にも雪が積もってこのままだとまた凍ってだめになってしまうから、部屋の中へと引き上げる。温められて雫がきらきら。

庭にはカチューシャ(隣の猫)の小さな足跡が残っていた。深く積もった雪の手前に足跡がいくつか重なっている。足の冷たさに戸惑って、数回足踏みしてから庭へ入っていったのかもしれない。

寒ければ部屋に閉じこもっていてもいいはずなのに毎日外に出かけてゆく。どこに行って、何を見て、何と出会ってるのかな。何がカチューシャを毎日の外出に駆り立てるのだろう。庭を見下ろすと時々機嫌良さげにとっとこ歩いてゆく背中に出会う。カチューシャの1日に付き添ってみたい。

『彼女の「正しい」名前とは何か』を読み終えたので岩波の『世界』を。この号から電子でも買えるようになったのだ。雑誌のpdfを読んでいる感じなので拡大しながら読まねばならずちょっと手間ではあるけど、読めて嬉しい。

そういえば『彼女の「正しい」名前とは何か』は数冊ぶりに実体の(?)本で読んだのだけど、やっぱり本を触りながら読むのはいいな。歩きながらとか寝転びながら読むには電子書籍のほうが優れてはいるけど、本を手に取ったとたんにさあ読むぞと体が準備する感じ、左手の方で感じる厚みで残りのページ数を意識しながら読む感じとか、注釈と行き来しながらあちこちページをめくる感じ、ページをめぐり損なうとふわっと風が顔にかかったりするのもいい。

自分の都合だけで踊ることしかしていない私の身体性などいつかの時代の人たちに比べたらまったく希薄なのだろうけど、体となにかがかかわる、この感覚から離れることはやはりあまり想像できないなと思う。