45. 行き来する境界線

アマヤドリ
·

だんだんと暮れていく窓のそばでクロウタドリの鳴くのを静かに聞いていた。仕事をしているので手は絶えず動かして、けれど目は青が沈んでゆくのを見上げる。枝の間に小さな光が見えて、まばたきごとに隣の枝、隣の枝に移動してゆく。空を見ながら、手の中を同時に見ている。映像にはなっていなくても、確かに見ている。

指圧をしている時の、目を開けているのに眼前のことは見ておらず、耳を澄ますのと見つめるのを同時に指先でしている感覚。文字に、実際には色がついて見えているわけではないのに頭の中ではそれぞれの色の存在がかぶさっていて、それは言葉にすれば「見えている」としか言いようがない。では目が覚めているのに夢を見ている時の感覚は?それぞれはどのくらい離れていて、どのくらい似ているのだろうか。

--

友人と話しながら、今だったらもう少しうまく、自分の理想だけを固く握りしめることなくほどきあえるだろうかということを考えた。うん、たぶん。たぶんだけど。10年かけて少しは変わったのだと思う。