米茄子みたいな犬との思い出

aming
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さっきスーパーに行ったら米茄子が安かったから買ってきた。今日は味噌田楽にしよう。

米茄子というと、アギちゃんという丸々としたシーズー犬を思い出す。米茄子みたいなアギちゃんは怖がりですぐガブガブ噛んでくる。多分噛むから近所のペットサロンには断られるのだろう。トリミングの練習にと、私らの元に定期的にやって来た。私は当時動物看護の勉強をしており、おまけ程度にトリマー資格の勉強もしていた。

最初はすぐ噛むし唸るし、全く可愛いと思えず、自分に当たりませんようにと祈っていた。それでも定期的に来るので何度か対応しているうちに、どうやらセカセカした動きが嫌なんだと気づいた。のんび〜り声をかけながら、今からここ触るよ〜なんて話しかけているとアギちゃんはおとなしくしていてくれた。まあたまに虫の居所が悪いと怒られるけど。

また、光るものが嫌いらしくコームやスリッカー、ハサミが見えるとクルクル回って噛もうとする。大変危ないので私たちは背中の後ろに光り物を隠し、気をそらせて背後から撫でながらカットをしていた。

撫でながらカットしたら毛の流れなんかあったもんではないが、アギちゃんはほぼ丸刈りに近い五分刈りのような状態なので関係ない。

しかも足先バリカン(足バリ)をかける希望が飼い主さんから出されているので、毎回仕上がりが珍妙になる。足先バリカンとは、足先にバリカンをかけてつま先だけがツルッとした状態になるトリミング方法のひとつだ。(全然関係ないけど私たちはバリカンをクリッパーと呼んでいたので、足クリと言っていた。)

アギちゃんはお肌が弱かったので、今思えばあの珍妙なカットはすべて飼い主さんの愛ゆえだったのかもしれない。ほぼ五分刈りの胴体に、つま先だけ鳥の足のようにツルッとしている。これなら蒸れることもないし肉球や足指の間も清潔に保てる。

たくさんの犬を洗ったり毛を刈ったりしたけども、名前もお顔も覚えているのはアギちゃんだけだったな。

あんなに嫌だったのに、『今日の予約一覧』にアギちゃんの名前があるとニヤッとして待ち構えるようになっていた。

もう20年以上前の話。米茄子をスーパーで見るといつも思い出す。