立ち入り禁止の草原に行ってみることになって、楽しみで笑いが止まらない。
その草原では誘拐事件が何回か起こったという噂がある。
待ちきれなくて下見に行くことにする。
草原は入り口から見たイメージよりも小さくて、長方形をしていた。横幅が5〜10m、縦幅は20m〜40m。
奥の突き当たりは崖になっているはずだったが、なんとなくそこまで行きたくなって草をかき分けて進んでいく。
半分もいかないうちに何台か車がやってきてスピーカーで止まれと言ってきた。
そのうちの何台からかは人が出てきた。マスコミの女性、弁護士の男、少し遅れて警察のおじさん。
警察に捕まる前にと急いで崖に向かう。マスコミと弁護士に追い抜かれたが、警察は追いついてこない。
マスコミと弁護士は一心不乱に崖を登り始め、気がつけば崖は黒くところどころ青く光る建造物に変わっていた。
「登らないの?」
知らないうちに隣に立っていた顔の綺麗な男に言われ、登ることにする。
登れば登るほど、なんだかとても気持ちがよかった。
いくつか生えている手の形の突起のうち一番低いものに座ると、意味もなく安堵すらした。
「そこが君の位置。一番下だ」
顔のいい男が言う。人間として程度が低い、という意味だとわかる。しかしここでいいのだということもわかる。
マスコミと弁護士はもうひとつ上の突起にいたが、マスコミが更に上を目指し始めた。
しかし、その上には見えないフタのようなものがあって登れないのだとなんとなく知っている。
「それ以上登ってはいけない」
顔のいい男が言う。
登るとどうなるのか。
下から警察の怒鳴る声が聞こえる。