突然酷い雨が降ってきたので、私たちは図書館のような古本屋のような本屋のような建物に逃げ込んだ。
児童書のコーナーで懐かしい作家の本を眺めていると、この本探してたんだ、と父が一冊を手に取った。
なんでも、この間、夜中に電話がかかってきたのだという。
「もしもしあまかわさん」
「もしもし、どなたですか?」
「○○です。××の新作の△△という本、とてもよかったですよ」
それだけ言って電話は切れたという。○○という人は知らなかったが、××は昔好きだった児童文学作家だったので、気になっていたのだという。知らない人が昔好きだった作家知ってるって気持ち悪いなと私は思った。
その本は上下巻になっていて、話をしている間に読むのが早い妹は上巻を読み終えようとしていた。
本の上に、輪になった色とりどりの宝石の映像が浮かんでいて、妹はそれを睨みながら、
「三月はアクアマリン。アクアマリンってどれだっけ」
とかなんとか、ぶつぶつ言っていた。