祖母の家は妖怪の世界に繋がっていたりして不思議だ。倉にある紺色の四角い缶は時を超える。
私の字で書いた覚えのない「助けて。○月×日△時、バス停※※、ほうちょうを持った男」という手紙が入っている。
○月×日は家族でバスに乗っていると※※で誰かが喧嘩しているのを見たんだった。
そんな風に私は何度かこの手紙を見た誰かに助けられているらしい。
祖母が死んで親戚中で家を片付けているうち、助けてくれていたのが無口な従兄だと分かる。倉は近々取り壊されてしまうけれど、私はそこに恋文を入れた。
数年後、従妹からの手紙を見つける。
「助けてくれてありがとう。あなたが誰か知っています。愛してる」
両想いだったのだと知って彼女のもとに駆けつける。
従妹はあの後超能力者として目覚め、人間の代表に祭り上げられ妖怪と戦っていた。強い力と地位を得た彼女を助けてやれるようなことはもうないだろうと思いこんでいたのだ。
従妹は趣味ではなさそうなボロボロのドレスを着て、長かった髪を短くして、たった一人で戦っていた。それでも俺と目が合うと昔と同じ目で笑った。
何か出来ることはないかと問う前に、彼女は妖怪の群れに向かって飛んでいき、跳ね返って落ちてくるのが見えた。