人工的に生まれた少女ちはるは、最近まで研究所から出たことがなかったため、外の世界の常識を知らない。
ファーストフード店に連れていき、ソフトクリームの乗った小さなパンケーキを買う。
「バニラとチョコどっちがいい? チョコはあまくていい匂いがするよ。バニラも甘いけど、もっとさっぱりしてる」
「んーとね、あまいのがすき!」
「じゃあチョコにしようか」
支払いをして受け取っている間に、ちはるは手を離して階段を駆け降りていってしまう。
「ちは! 待って!」と叫ぶと、その辺にいた女の人が「お父さん呼んでるわよ」と声をかけてくれる。「ちはのおとうさんじゃないよ」とちはる。顔を強張らせる女の人。確かにそうだが話をややこしくしないでほしい。