「なんでまだ生きてるんだ……?」
「それは君が私に刺客を放ったということかね?」
あたしはもうだめなのです。
ついに空も飛べなくなりました。
魔法は信じる力です。何を信じていたっていいのです。信じれば使えるのが魔法です。先生たちはそう言います。だから、信じる力の強い子どものほうがたくさん魔法を使えるんだって。
あたしは小さなころ、とても空想の上手な子どもでした。本を読んでいたら妖精や小人が手元を覗き込んでいたことなんてしょっちゅうだったし、ある時なんて気がついたらお城で暮らしていました。そのお城は町のど真ん中、あたしの家があったところに今も建っていて、あたしのお母さんとお父さんが広すぎて困ると言いながら暮らしています。
そんなわけで、あたしは魔法の天才と呼ばれるようになりました。
するといろんな国のいろんな人がうちの国で働いてほしいとかうちの学校に通わないかとか誘いに来ました。魔法で外国の言葉を聴いたり喋ったりできるのはとても便利です。
あたしはみんなの話を聞いて、一番わくわくした学校に行くことにしました。魔法の心得を他の学校よりもしっかり教えてくれるということでしたが、何より学び舎は北欧の深い森の中にあって、生徒たちは寄宿舎での生活だというのです。近所の山にはドラゴンも住みついているというし、何よりルームメイトと真夜中のお茶会をするのが本当に楽しみでした。
あたしは学び舎へ文字どおり飛んでいき、まずは近所を散歩したいとわがままを言いました。
ところが、深い森はわざと人を迷わせようとしてくるし、ドラゴンは羽の生えた小さな蛇だったし、観光を終えて案内された部屋は一人用でした。
あたしは自分の見る目のなさにがっかりしました。思えばそれが最初でした。
翌朝、転校生ですと全校生徒の前で紹介されました。
当たり前ですが、外国の子どもで、背が高くて、髪や目や肌の色もあたしと違って、あたしにはみんながきれいな顔をしているように見えました。外国の大人と会ったことはありましたが、大抵は一人か二人、多くて十人いるかいないかでした。なのにその時は、きれいな外国の人たちが何百人もあたしを注目していました。
すっかりうちのめされて、空も飛べなくなった私に、一人の女の子が言いました。
「飛べないの? 信じる心が足りないんじゃない? ほら手を取って。私なら信じられるでしょ」